やさしい食卓二。【SS】 (ページ20)

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五十。幼馴染み【和】ページ20

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“智くん”

Aさんにしては随分、親しみの込もった呼び方だ。

ソイツは、俺の存在など気にする素振りもなくAさんに話し掛ける

『昨日、涼子ちゃんの結婚式だったろ？どうだった？』

…あれ？

生田の嫁さんの事、知ってる？

『もう、本当に良い結婚式だったよ。涼子もすごくキレイだったし』

彼女がそう応えると “そりゃ良かった” と言って、差し出された生ビールに口を付ける。

『ん、言われてみりゃ、なんか目腫れてんな。そんな感動しちゃった？』

ソイツに図星をつかれ、目を丸くするAさん

『あっ…そ、そう！もう、涼子の手紙の所で感極まっちゃって「すげー感動的な、良い結婚式でしたよ」』

慌てる彼女を見兼ねて、そう口を挟んでみる。

唐突に口を挟んだ俺に、彼女は先ほど丸くした目を余計に見開いて驚いた顔をした。

すると彼女に負けじと、ソイツも俺の発言に驚いたようにこちらに顔を向ける。

「実は僕、涼子さんの旦那になった男の上司なんです」

俺はソイツの目を見てそう言った。

「この店は開店当初から使わせてもらってるんですけど、まさか僕の部下の嫁さんがAさんの友人だとは思いもしなくて。

昨日、披露宴でAさんに偶然お会いして驚きました」

俺がそう一通り説明すると

彼は納得したような顔を見せ “そうでしたか” と言って笑った。

『そ、そう！すごい偶然でしょ？智くん、こちら涼子のご主人の上司、二宮さん』

そう言って彼女がソイツに俺を紹介すると

“どうも” と言って軽く会釈した。

『二宮さん、こちら私の幼馴染みで、築地で水産業をやってる大野さんです。この店の魚介類は全部、彼の所から仕入れていて』

なるほど、幼馴染みね。どうりで。

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『あ、智くん。入れてもらったばかりの牡蠣、まだあるから牡蠣フライにしようか？』

Aさんがそう言うと

その大野智って奴は “うん、ありがと” と言って彼女に優しく微笑みかけた。

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…きっと、間違いない。

コイツも、彼女に想いを寄せる一人だろう

彼女に微笑みかけるその目が、そう物語っていた。