【アイナナ】パーフェクト彼氏の言う通り【和泉一織】

第3講 ページ3

｢あ、ありがとう…！｣



まだ、一織くんにこういうことを言われるのに慣れてなくて、ぎこちなくなってしまう。



…というか、一織くんこそ。そのスーツ姿…





紺色のスーツをピシッと着こなし、さっきまでしていた変装用のサングラスまで似合ってしまうのは、さすがアイドルとしか言いようがない。



そして、髪型はオールバックを濡れ髪風にきめて、襟足は前より少し長くなっている。






本当に、本当にかっこいいなぁ。






｢一織くんだって、すごくかっこいいよ！ほんとに…そのスーツとか、似合いすぎてほんと…｣



相変わらずの語彙力のなさで一織くんがいかに輝いているかをわたわたと説明する。





｢ずっと見てたいくらい……｣






ここまで言って、ハッと我に返ると同時に少しだけ胸の奥がツキリと痛む。









…そう、一織くんに会えたのは、2ヶ月ぶりのこと。







IDOLiSH7はますます快進撃を続け、あれから2年で人気は今最絶頂にある。


一織くん自身も、クイズ番組や夜の情報番組の準レギュラー…そして俳優業など、その仕事の幅はどんどん広がっている。



目が回るほどに忙しい毎日だろう。私も、IDOLiSH7の活動の場が広がっていくのはこの上なく嬉しい。







…でも、その日々の中に私との時間を作る暇もないのも事実。





少し表情が陰ってしまったのがバレたのか、一織くんは申し訳なさそうにうつむく。





だめだ、一織くんにはそんな顔してほしくない。


私は一織くんの仕事が順調なことが1番幸せなんだから。






｢ううん…いやまず、今日一織くんに会えて本当に嬉しい…！｣




精一杯の笑顔で言う。




寂しいなんて思って、ましてそれを察し取られたら絶対にだめ。


一織くんの仕事の妨げにだけは、絶対になりたくないよ。





｢今日も、わざわざ時間作って会いに来てくれたんだよね…本当にありがとう！｣


｢Aさん…｣




｢…ていうか！どうやってここに来たの？あ、あとどうしてここが分かったの？あれ？免許持ってたっけ？｣





つとめて明るく振る舞う。でもね、全部全部本音なんだよ。


一織くんに少しでも会えるだけで、本当に幸せだから。




私の忙しない質問攻めに、一織くんは少し表情を緩めてくれた。








｢相変わらず忙しい…もとい、かわいい人だな。｣








…一織くんのストレート砲は、以前とは違う意味で心臓に悪い。









｢Aさん。このまま、二次会抜け出しませんか。｣

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