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51(碧色) ページ50

ナナシと名乗る少女はひたすらにトンカチを古い彫刻刀で気を削り驚異的な速さで芸術品を作り上げていた。

ナナシと名乗っているものの、僕達の本当の名前は別にあるのだけれど。

でも僕達にそれを名乗る事は許されない。僕達というより、僕は。ロクくんは正真正銘僕に巻き込まれてるだけだ。

僕はふと、過去のことについて考える。その間も手は止めない。時間が惜しい。僕が生きられる時間はあと200時間を切っている。

僕の親の大罪は許されるものではないのだろう。親が買った恨みが借金のように僕に受け継がれ、その結果がこの呪いだったとしたら納得も行く。

だがロクくんを巻き込んだ理由は?

無関係なロクくんを巻き込んだ時点でこの呪いは僕への罰からただの罪へと成り下がった。

なんとしても、ロクくんだけでも助けてもらわないと困るんだよね。

そう考えながらナナシの少女は出来上がった彫刻を眺めた。

それはとても美しく完成された彫刻だった。
__

ロクはすっかり静まり返った部屋で過去を思い出した。

僕はただの無個性で嫌な子供だった。他人の不幸を喜び見下されることを望んだ。

僕はこの呪いが発覚した時『なんて強い個性を手に入れたんだろう』ととても喜んだ。

ほかの人達は『そんな呪いにかかるなんて可哀想に』と僕を哀れんだ。

僕はそれがたまらなく嬉しかった。

それなのに

……呪いで死ぬのは僕だけでいいんだ。可哀想なのは僕だけでいい。

なんとしても彼女の呪いだけは解かせなくては。

そう思って僕は天井を見上げた。

天井にまで描かれている傑作を見て僕は微かに顔を歪めた。
__

「やあ諸君!待たせたね!さて、話の続きをしようじゃないか!」

ナナシちゃんがそう言って部屋に入ってきたのとほぼ同時に、ホープたん達が帰ってきた。

「なんていいタイミングなんだ!本の方はどうだったんだい?……って、怪我をしている人がいるじゃないか!はやく手当をしたまえ!話よりそれが先だ!」

ナナシちゃんはとても慌てている様子だった。

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作者名:緑茶餅と碧色 x他1人 | 作成日時:2017年7月17日 20時

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