第十五章『向き合うことの覚悟』【1】 ページ34
「うん・・・なんか・・・違ったかな・・・」
「そうね・・・・・・ごめんなさい、クロ・・・・・・」
痛くはね―――――けど音が・・・と球の中でぐったりと蹲ってしまったクロに真昼と瑠璃は眉を下げながら詫びると。
「真昼のアニキと瑠璃でも壊せねぇなんて・・・」
鉄が何か思うところがあるかのような台詞を口にしたのだが―――――。
「おい鉄。お前、結構適当に言ってねぇ?」
そんな鉄に対して真昼は思わず半眼で突っ込みを入れてしまう。
何故なら鉄は『頭脳派』ではなく『体力派』の人間だからだ。
瑠璃は苦笑を浮かべながら縁側に腰を下ろすと黒い球を膝の上に置く。
と―――――
温泉宿の主人である鉄の父親が通路の向こう側から顔を覗かせて、
「鉄。お前達にお客さんだよ」
「あっ、来た!?」
外国の方、と付け足された言葉にすぐさま反応をしたのは真昼だった。
御園との話を終えた後、真昼が再度クランツに連絡を取って、拠点を構えているこの白ノ湯温泉に来て欲しいと頼んだのだ。
そして瑠璃は鉄の父親に対して「知らせて下さって有難うございます」と礼を述べると、真昼とともにクランツの元に向かい。
拠点として構えている部屋にまた全員で集まった処で、クランツとそれからともに来ていたギルデンスターンに、リヒトとロウレスが今現在どういう状況になっているのかを話すと―――――。
「リヒトがさらわれた・・・?」
クランツは生気の抜けたような状態になってしまい。
「そうか・・・敵の吸血鬼に・・・」
そのまま、ふらっと後ろに倒れそうになったクランツの身体を、ギルデンスターンが後ろに回ると支えていて。
「すっ・・・すみません!! 俺・・・助けに行ったのになにもできなくて。リヒトさんは俺のこと庇ってくれて・・・っ」
そこでクランツに向かって、謝罪の言葉とともに頭を下げたのが真昼だった。
けれどあの時、あの場所に居たのは真昼だけではないのだ。
瑠璃もまた深々と頭を下げると言葉を紡ぎ出す。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年4月25日 21時