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冷side
未羽が来てから数年後。
桜「…かみさま？」
森で迷っていた桜羽を助けたら、凄く懐かれた。
まあちゃんと頭巾を被っているかとか角の事が知られていないかとか結構気になっていたけれど！！
「桜羽か。…未羽は、母君は息災か？」
僕、何言ってんだろう。
桜「うん！！でもね、おーはにごめんなさいっていうの。ちゃんとうんであげられなくてごめんなさいって。…おーはのせいで、かかさまが…。」
…やはりか。おそらく未羽は彼女の事を知っている。手記が残っているか或いは口伝えか。
「未羽は此の村で育ったのか？」
桜「ううん。ととさまの家にとついできたんだっていってた。」
桜羽の家は確か…村で唯一の薬屋だった筈だ。不味いな…鬼の子だとでも言われてみろ、巫女という大義名分の元、生贄にされるのがオチだ。
「桜羽。未羽を守りたくば、其の頭巾を外してはならん。此処にも…二度と立ち入るな。」
桜「なんで…」
「さすれば、命までは取られまい。」
神に嫌われた娘ならば、巫女にされる事も無いだろう。やり過ぎでは呪いの子と騒がれるから、神社に立ち入れないくらいが丁度良い。
そう、思ったのに…。
…二十歳を少し過ぎたくらいだろうか。美しい娘へと成長した桜羽が、再び此の神社にやって来たのは。
其の頃村では疫病が流行り、死者は増える一方。日照りも続き、あわや飢死かと思った桜羽が僕に祈ろうと考えたらしい。
…僕は同族を生贄にするような奴等は嫌いだ。でもだからと言って苦しんで欲しい訳じゃ無い。其れに桜羽が死んでしまっては元も子もない。
「其の祈り、確かに聞き届けた。もう帰りなさい。明日になれば全て解決している。」
…だから僕は、疫病を消し、雨を降らせた。
そんな事が何回か続いて…桜羽はすっかり神社に入り浸るようになった。
桜「ところで、神様に名前は無いのですか？」
「有るが…よく聞き取れないと思うぞ。…そうだ、どうせなら桜羽が付けてくれないか？」
桜「…うーん…神様は綺麗で、真っ白で…雪みたいに…あっ！！冷、は如何ですか！？冷たいと書いて冷。初めて会った時の第一印象なんですけど、綺麗過ぎて冷たい感じがして…あ。」
冷、と名付けてくれたのは彼女だった。因みに久作も。
「私の相棒でな？リューン・アースというのだが、あれはいい奴でなぁ…。私が死んだ瞬間に私を弔ってくれたのだ。綺麗な蒼い炎で。…本当に、夢のようだったよ。」
桜「では…彼の名は夢野久作ですね。」
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作者名：マツリ | 作成日時：2019年3月24日 23時
