【歌い手恋文企画】机に描いたloveletter 1st (ページ16)

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【センラ】逆さまの世界3 /　うさ美* ページ16

テストが終わるまで、会うのを避けようと言われた。
テスト期間になれば先生も忙しくなるが、周りも遅くまで居残りを始めてしまう。
いつものことだが、少し寂しいという感情を抱えながらノートの隅に気持ちをぽつぽつとこぼす。

「席につけー」

テスト期間が終わり、テストの点数をみたら100点満点だった。数学の成績が上がった。
先生に褒めてもらおうと思ったが、提出した私のノートをみて笑われた。

「落書き禁止(笑)」

「……先生が最近見てくれないから」

ノートの隅に小さく「ばか」「だいすき」「こっちむけ」と書いていたのがバレた。
拗ねながら頬を膨らますと、先生は困ったように笑って「ごめんなさい」と教師の顔をする。
それがまた気に食わなくてそっぽ向くと、先生は「今日も居残り?」と私の顔を覗きこむ。

「先生、君に話したいことがあるんだよね」

「……じゃあ時間つくる」

「うん。ありがとう」

少し、嫌な予感がした。先生の様子がいつもと違う気がした。
こんな私でも人の気持ちを理解できるようになったのかと思ったが、クラスメイトがいじめられているのにも何も感じなかったからきっと気のせいなのだろう。

「……」

移動教室の最中、鳥の鳴き声に足を止めて廊下の窓を開けた。
あぁ、今日の空は綺麗だ。

「Ａ、Ｂの二人が球の入った袋を持っている。Ａの袋には１、３、５、７、９の数字が一つずつ書かれた５個の球が入っており、Ｂの袋には２、４、６、８の数字が一つずつ書かれた４個の球が入っている。ＡとＢが各自の袋から球を１個取り出し、書かれた数が大きい方の人を勝ちとするとき……」

「先生の話、聞いてくれるんじゃなかったん?」

問題を読み上げる私に、痺れを切らした先生は不満そうな目を向けた。
そんな先生に子供みたいだなと愛おしく感じてしまったのだから、私はかなりおかしくなってしまったらしい。

「確率、答えてください」

「2分の1……なぁA、何考えてるん?」

「確率」

「確率……??何の?」

「私が振られない確率……五分五分ってところかな」

先生をからかうように「ふふ」と笑うと、先生は急に真面目な顔をした。
心を重ねすぎて、次に出てくる言葉が嫌でもわかってしまう。

「俺本当はさ、Aのこと好きじゃなかってん……せやから、終わりにしようや」

先生の儚い笑みに涙が溢れて、せっかく黒く塗ったノートを滲ませた。
涙なんて、当の昔に枯れたと思っていたのにな。なんで流れたんだろう。