誘惑の甘い・・・ ページ17
.
ふわっと急に、漂う甘い香りが強くなる。
Aさんの人差し指には真っ赤で美味しそうな小さな粒が乗っていた。
そこから、僕の空腹を散々刺激しまくっていたあの甘い香りが強く強く放たれて、胸が高鳴り、身体の中の血がざわつき、頭がくらくらしてきた。
僕を誘うその小さな赤い粒から目が離せない。
手を伸ばせば……口に入れたら……。
ごくっ……
また喉が鳴る。
でもそれを手に取っちゃいけない。口にしちゃいけない。
だって彼女とは初対面。僕の事を全く知らない。
あぁ、でも……でも……
ダメだ……この色、この香り……
舐めたい。
食べたい。
欲しい。
もうそう感じてしまったら自分を抑えられなくなって、彼女の手を取り赤い粒の乗った指を口の中に招き入れていた。
…………冬イチゴの小さな欠片程のその1滴が舌に乗ると、僕の口の中で甘く蕩けて広がっていく。
「……っ!」
その瞬間、一気に体温が上がり、体中の血が駆け廻るような感覚。
たった1滴なのに、さっきまで感じていた激しい空腹も渇きも、驚くほど軽くなった。
どんな食べ物よりも美味しくて、どんなお菓子よりも甘くて、ヒョンからおすそ分けで頂いてきた女の子たちのどの子よりもダントツで僕好みの味。
何より、想像を絶する美味しさだった。
ちゅっと音を立てて口からAさんの指を離した。
「・・・やっぱり美味しい」
もっと欲しい。
この1滴でこんなに美味しいんなら、ひと口はもっと美味しいに決まってる。
口の中に広がる甘美なAさんの血の味に我を忘れかけていた。
彼女の手を軽く握り直し、手首を眺める。
そこから僕の目は、この白くて綺麗で柔らかそうな肌の下に流れる甘い蜜を強く求め、じっくりと舐めるように首筋を見つめた。
ゆっくりAさんの顔に視線を移すと、耳まで真っ赤になって、困った表情で目を逸らし俯いているのが見えた。
その姿を見てハッと我に返った。
……僕は今、初対面の女性に間違いなく盛大に、とんでもない事をやらかしてしまったと。
1119人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - syky1814さん» コメントありがとうございます。間もなくパス外して更新しますので、もうちょっとだけお待ち下さい〜。 (2020年6月13日 21時) (レス) id: 4017986d72 (このIDを非表示/違反報告)
syky1814(プロフ) - はじめまして結婚してくださいのパスワードを教えてください。 (2020年6月13日 21時) (レス) id: 1e639eab67 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - kinanekoさん» コメントありがとうございます!何だかガッツポーズが見える気がしてきましたwそんなに喜んでいただけると作者冥利に尽きます。ありがとうございます、ぼちぼちっと頑張ります♪ (2019年1月3日 22時) (レス) id: 1e736e073a (このIDを非表示/違反報告)
kinaneko(プロフ) - あがしおんさんの新作を見つけた時、「来た……!!!!よっしゃ!」と思いました!今年もいろんな作品が見たいです!頑張ってください!応援しています! (2019年1月3日 21時) (レス) id: 6812edf24f (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - ARMY&CARATさん» 私の拙い作品を気に入っていただけて、ありがとうございます!マイペースですが、更新頑張ります! (2018年12月29日 2時) (レス) id: 1e736e073a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あがしおん | 作成日時:2018年12月25日 0時