35話 お願い ページ35
大野家次男が弱いものは弟。
自他ともに認める怪獣ブラコン。
目の前で自分より背の高い弟が上目遣いで見つめている。
可愛くてどうしようもない。
しかし彼は懇願中なのだ。
「外に行きたいと？」
「今日は満月なの。特別なムーンなの。スーパーなんだよ」
「今夜は冷える予報だぞ？」
「だからお願いしているじゃん」
今夜はスーパームーンと呼ばれる新月。
天候は雲一つない晴天で無風。
絶好の撮影日和。
写真家の雅紀にとってこの機会は見逃せない。
けれど雲がないということは温かい空気は空の向こうにいってしまい夜の気温が下がるという事。
「撮影場所は家の周り？」
首を横に振る。
電気、電灯の届かない林や湖の希望。
翔がイエスと言う訳もない。
「雅紀の体調は良さそうだけど」
「誰かに付き合ってもらえば？」
末っ子の提案。
「じゃぁ俺が……」
「智ちゃんにお願い！」
翔が立候補をするも雅紀の声に消されてしまう。
「オイラ？」
「今日の満月はすごいんだよ！絵の参考になると思う！」
「そうか？じゃぁ行こうかな」
胸まで上げられた翔の手が淋しそう。
「帰ってきたら風呂に入れるように準備をしておくよ」
「ありがと潤ちゃん」
「では本日の入浴じゃんけん……」
「智ちゃんと入るね！智ちゃんも冷え冷えになってるはずだもん！」
『雅紀君と一緒にお風呂タイムじゃんけん』の声を再び雅紀にかき消される翔。
両肩が下がる。
他二名もだ。
面白くなさを隠さないへの字口の和也。
穏やかな表情を浮かべているが瞬きをせずに智をみている潤。
威嚇中。
気を取り直して、
「温かい飲み物を用意するから持っていけよ」
と言うものの潤の声は途中裏返った。
翔と和也は笑いをこらえる。
「ありがとうね」
「晩メシの後に行くか」
「夕日と月を一緒に撮りたんだよぉ」
「わかりましたよ。おにぎりとスープを持たせます」
「いつ出来上がる？出来次第に出発したい」
「一時間あれば」
「智ちゃん準備しよう！テントを持っていこうよ」
「ワンタッチテントでいいな」
盛り上がる二人をよそに和也は潤と一緒にキッチンへ入る。
「私、お米を炊きます。潤君はスープね。しょー兄はテントとまー兄の服、暖かいの選んで着させてよ」
それぞれ準備に取り掛かる中で冷蔵庫からワサビのチューブを取り出した潤。
和也は小さく首を横に振る。
「さー兄のおにぎりにワサビの嫌がらせはやめなさいね」
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むつき(プロフ) - tthisamiさん» 遅くなりましたが再開いたしました。 (8月29日 21時) (
レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
tthisami(プロフ) - 再開嬉しいです。 (8月29日 20時) (レス) @page50 id: dba9116941 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はるさん» なかなか更新できずに申し訳ないです。少しずつですが頑張っていきますので！ (2021年3月30日 23時) (レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - むつきさん、更新ありがとうございます！とても嬉しいです。続きが楽しみです！ (2021年3月23日 4時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ちぇろさん» 5人が揃いました。北の地で兄弟たちの絆をお届けできたらと思います。 (2020年10月27日 0時) (レス) id: 7a3d8c34a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2019年8月2日 23時
