斜陽2【中原中也】

第52話 ページ2

中原side





貴女「……」



中原「A？」




三歩先を歩いてAが立ち止まったことに気づいた




貴女「………私…



…中也さんと離れたくありません」



中原「・・・」




俺達の間を風が吹き抜け俯いたAが顔を上げた




中原「手前を部下から外すつもりはねェぞ」



貴女「……そうじゃない…」



中原「……………………なんつー顔してんだよ」





今にも泣き出しそうな手前には似合わねェ幼い顔だ





貴女「……私が家にいたら邪魔ですか」



中原「あ？んな訳ねェだろ」



貴女「……じゃあ……ずっと置いてください」



中原「………あの家にか？」



貴女「…そうです。

私は……朝、中也さんに起こされて中也さんが作ったご飯を一緒に食べて

一緒に仕事に行って一緒に夜ご飯を作って食べたいです」




中原「お、おい…」





なんだそりゃ…



そりゃまるで………





貴女「…………自分の家なんていらないです


…あなたとずっと一緒に………」




中原「……………何故


何故そこまで俺と…」




貴女「……………」




中原「俺が兄貴みてェだからか？」




貴女「………」




中原「…………それとも


全てを失った手前の前にたまたま現れたからか」



貴女「…………」





俺の欲しい答えを手前は云ってくれない





貴女「………云えない、です」



中原「…………そうか。」



貴女「…………中也さんは


…私が必要だと云った理由を

異能以外ありますか…」



中原「…………」




俺は異能が欲しくて手前を必要と云ったんじゃない



俺は………



『じゃああなたは中也さんです。中也さん以外の何者でもない』





中原「………手前に貰ったある言葉が俺を俺でいさせてくれる。」



貴女「…言葉、？」



中原「………あの時から俺は手前を…………」



貴女「…………中、也さ、ん…」





頬に手を添え涙の滲む瞳を拭う





中原「……………………」




『云えない、です』




中原「…………」





手前は俺と同じ気持ちじゃねェ




云ってしまえば





俺と手前のこの関係は終わっちまう……





中原「……………手前は大事な部下だ。」


貴女「……………」




中原「それ…だけだ…。」


貴女「…………………そうですか」


中原「あァ…。だから追い出すつもりなんてねェ。

好きなだけいろ」


貴女「……」


中原「帰ろうぜ。」




手を離しポケットに突っ込んだ




………これでいい。

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