【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

71.『上賀茂愛梨の悩み　その拾壱』 ページ26

愛梨が盛大に私を褒めてくるので、気恥ずかしくなってしまい、私は視線を只管泳がせていた。

あれだ、すっげぇ逃げたい。

｢宮林先生といえど、どんなに凄い作家である貴方でも！海月先生を馬鹿にするのだけは許せません」

本気で怒る愛梨を見ながら、私は何処か自分を遠く見ているような気がした。

――弟子がここまで言ってくれているのに、私は何か返しているか。

心臓の鼓動が煩い。何故、ここまで私は心が揺れている？

「海月先生は、素晴らしい人です！」

愛梨の潤んだ瞳に、私は口を結ぶ。安室といい、愛梨といい、本当に、困る。

｢本当に、何処がいいんだい、愛梨ちゃん！！僕の方が技術も、知識も、経験も多くあるというのに！！それに、彼女は、」

何故か宮林先生の言葉の続きに嫌な予感がした。何か、踏み入ってほしくないものを感じたのだ。


｢彼女は、親の死んでも、自分のことを優先した薄情な人間だというのに！！


―――倫理観のないのは、海月先生の方だ！」

――やめろ、

宮林先生の容赦のない言葉を諸に食らった。もう立ち直ったはずの記憶がじくじくと疼いた。

｢そんなこと、」

安室や愛梨が言い返そうとした。しかし、その続きを宮林先生は奪い取った。

「そんなことあるさ！彼女は、とんでもなく冷酷な人間だ！なんたって」

ぞわりぞわりと肌が栗立つ。

――やめろ

歯を食いしばって、感情のままに言い返そうとしたので、私はそれを宮林先生の方へと歩きながら、制した。

｢言いたいことは、それだけか」

自分でも驚くほど、冷たい声が出た。

心臓が、痛い。

72.『上賀茂愛梨の悩み　その拾弐』→←70.『上賀茂愛梨の悩み　その拾』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す