病気とは言わないで２

消えた守護者　４ ページ45

しばらくして、ようやくイートは落ち着きを取り戻したようだった。

「先生には、言ってない、の？」

「ま、まだ、言ってないです」

「どうして、私の、ところに……」

　イートの"病気"であるエイトがいなくなってしまった。イートの水色の髪の毛が動き、怪物のような姿に変化しなくなった。そうなったら真っ先にこの病院の先生に言うべきじゃないだろうか。

　それが一体どうして、イートは私のところに来たんだろう。

「そ、その、エイトがいなくなって、不安で仕方なかったとき、ユカさんのお顔が思い浮かんだんです。なんでか、私、あの、分からないけど、ユカさんのところに行けば、どうにかなる。そう思って……」

「でも、私じゃ……、何も……」

　どうにかって、そんな事言われたって私はエイトを戻してあげる何てことはできない。

　そもそも、病気だと言われているそれがなんなのか分かっていないのに。

　私は医者じゃない。

　私は何も知らない。

　私は……。

「すみません、本当に……。迷惑かけちゃって……。あの、私、やっぱり先生のところに行ってきます」

　そう言ってイートは、病室から出ていこうとした。

「あ、まって」

「あの、ありがとうございます。ユカさんのおかげで少し落ち着けました。大丈夫です。きっと、きっとエイトは戻ってきてくれます」

　イートは寂しそうな顔で優しく笑うと、病室を出ていってしまった。

　廊下を歩く足音がどんどん遠ざかっていく。

　私は、イートの力になれたんだろうか？

　ただ泣いてしまったイートの側にいて、背中をさすっていただけ。

　私のことを頼って来たイートに私は何ができたんだろう。

　私は……。

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