臆病と勇猛 5 ページ10
「本当に悪いことをした」
ロウさんは泣きながらそう言うけれど、腕は拘束を解こうと必死で暴れている。
「……本当に、すまない」
「もう、いい、です。そんなに、謝らなくても……」
「もう誰も傷付けないと誓ったのに、ひどいことをしてしまった。それに、君達を、危険な目にあわせてしまった。全部私が悪い。許されないことをしてしまった……。私は…………」
ロウさんは話している内にどんどん声が小さくなって、聞こえなくなっていく。
その代わりみたいに涙の粒は大きくなって、ぼろぼろと床にこぼれ落ちた。
『情けない奴だな』
エイトが冷めたように言う。
「……誰、でも、そういう、の、はある……から、しょうがない、と思う」
『ふん、そんなものか……』
「あの、何が何だか……」
目隠しされたままのイートは、何が起こったかまだ分かっていないようだった。
「わ、私だって、一応当事者だから、ちゃんと把握しておかないと……」
『駄目だ。お前にはショックが大きい。苦手だろう? 死体とか、血とか』
それを聞いたイートが大きく身震いをした。
「ひぃっ……」
確かにエイトの言うとおり、床に転がされたままの手足がぐちゃぐちゃに折られたハッパの体は彼女には見せない方がいいだろう。
昨日話したときも、この手のやつは作り物でも絶対無理だと言っていた。
作り物じゃない本物を見てしまったらどれだけショックを受けるだろうか。きっと、トラウマは確実だろう。
そういう私だって、こういうのは苦手だ。
でも、どうにかしなきゃという思いの方が強かったから、平気でいられた。
ロウさんを無事押さえることができて、ひとまずは安全になった今、どうにかしなきゃという思いが薄れてきて、冷静になって手足の折れたら体を見ていると……。
どうしようもない嫌悪感と、恐怖が私を襲った。
気分が悪くなり、吐き気やめまいもしてその場に座り込んだ。
『どうした』
「ユカ?」
エイトやロウさんも私を心配そうに見ている。
目をそらそうと思うのに、どうしても視線が見たくもない手足の折れた体にいってしまう。
心臓がばくばくして、呼吸も荒くなっていくのが分かる。
ついには意識がここで途切れてしまった。
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ぺぽん(プロフ) - すっごく面白いです!どのキャラも個性的で読むのが楽しい🎶応援してます! (2022年8月21日 7時) (レス) @page49 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ペンバタのサブ - 神作だあああああああ!!!応援してます! (2022年4月11日 15時) (レス) id: a2299a2d24 (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» 投稿しました!(返信不要です) 衛生兵079様の他の作品もいつも拝見させて頂いております...沢山の素敵な作品をありがとうございます💓😭 (2022年2月6日 17時) (レス) id: 267274e32b (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 頭は痛くないさん» 大丈夫ですよ。 (2022年2月6日 16時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» ありがとうございます(TT)描き終えたら私の作品の“デジタルなイラスト集”に載せたいのですが大丈夫でしょうか、もちろん衛生兵079様の作品のキャラクターだということは明記致します (2022年2月6日 14時) (レス) id: 82fde595ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年6月9日 16時