臆病と勇猛 4 ページ9
多分一番近くにいる人を傷付けようとするのか、まだ生きているハッパの頭を拾おうとしているようだが、ロウさんは立ったままなので床の頭には手が届かないらしい。
「駄目だ。駄目なのに、どうしても言うことを聞かないんだ」
ロウさんの目から涙がこぼれた。
その様子を見てハッパはニヤリと満足そうに笑うと、目を閉じて動かなくなった。
「あ、ハッパ、が」
もしかして死んでしまった? 私のせいで?
『死んだふりだな。きくのか?』
エイトが小さな声で言ったのが聞こえた。
そう言われてよく見れば、ハッパの頭は小さく呼吸をしている。死んではいないみたいだった。
『おい、どうする』
届いてはいないが、腕はくるくると回ってハッパの頭の様子を伺った後、私達の方に腕を伸ばした。
腕はハッパを死んだものと見なして、標的を私達に変えたようだ。
「あ……」
さっきまで動こうとしなかったロウさんがふらふらとこちらに近づいてくる。
「ユカ。ごめんなさい。ごめんなさい。どうして歩いているか私にも分からないんだ」
『おい、逃げるか? 頭を転がした後はどうするつもりだったんだ? 聞いているのか? おい』
「ユカさん……、何が、どうなってるんですか?」
私はどうすればいい?
今は言われた通り逃げるのが一番かもしれないけど、ロウさんはどうなるの?
きっと、私は助かっても、最悪他の人が……。
「ユカ、早く逃げてくれ! 君達を傷付けたくないんだ!」
ロウさんはもう目の前まで来ている。
もう少しで手が届く。そして私は殺される。
何かしなきゃ。
今までも逃げてばっかりだった。でも今は逃げちゃいけない、逃げられないから何かしなくてはと思った。
それで私は、腕に捕まる直前。身を屈めてロウさんに思いっきり体当たりをした。
ロウさんは思ってもみない体当たりにバランスを崩して倒れた。私も倒れそうになったが、エイトが支えてくれて倒れることはなかった。
エイトから、私を支えているのとイートを庇うようにしている腕とは別の腕が生えて、倒れたロウさんの腕を中心に押さえつけた。
ロウさんを押さえる水色の腕はまるで植物のように伸びてロウさんをぐるぐる巻きにして動けないようにしている。
そういえばエイトは髪の毛だから、そういうことも出来るんだろう。
『押さえたぞ』
「あぁ、ごめんなさい」
ロウさんは倒れた時の仰向けのまま、絞り出すような声でそう言った。
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ぺぽん(プロフ) - すっごく面白いです!どのキャラも個性的で読むのが楽しい🎶応援してます! (2022年8月21日 7時) (レス) @page49 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ペンバタのサブ - 神作だあああああああ!!!応援してます! (2022年4月11日 15時) (レス) id: a2299a2d24 (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» 投稿しました!(返信不要です) 衛生兵079様の他の作品もいつも拝見させて頂いております...沢山の素敵な作品をありがとうございます💓😭 (2022年2月6日 17時) (レス) id: 267274e32b (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 頭は痛くないさん» 大丈夫ですよ。 (2022年2月6日 16時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» ありがとうございます(TT)描き終えたら私の作品の“デジタルなイラスト集”に載せたいのですが大丈夫でしょうか、もちろん衛生兵079様の作品のキャラクターだということは明記致します (2022年2月6日 14時) (レス) id: 82fde595ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年6月9日 16時