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みんな泣いてた ページ47

「そいつをこっちに連れてこないで! 私の目の届くところに来させないでよ!」

 お母さんの高い声が頭にきんきんと響く。急に大声を出したから、生まれたばかりの妹はビックリして泣き出してしまった。

「いいじゃないか、たまには……」

「駄目よ! 嫌い、嫌い!」

「家族だろう?」

「違うわ! 髪も目も、私達と違うじゃない! どうして、こんな子がここにいるの!?」

 青い目からぼろぼろ涙をこぼしてお母さんが言う。

「この子のせいで、私は……」

 また、お皿が割れた。

「どうしてこんな思いしなくちゃいけないの……」

 お母さんはその場に座り込んで、声を上げて泣き始めた。妹も泣いている。よく見ればお父さんも少し、涙が滲んでいた。

 どうしよう。

 泣いていないのは自分だけだ。

「アシッド」

「なぁに?」

「お前は部屋に戻っていなさい。ご飯は後で持っていってあげるから、いいか、部屋から絶対に出るなよ」

「わかった」

「部屋から出るんじゃないぞ」

「出るなよ」

「言うこと聞けない子は悪い子だ」

「絶対に出るな」

 いっぱい声がする。

「やめろ、黙れ」

「なんだ、言うこと聞けないのか?」

「部屋から出るな」

「家の外の人とは絶対に関わるな」

「見られるのも駄目だ」

「特にその目は駄目だ」

「皆大嫌いな赤い色じゃないか」

「うううう……」

 頭が痛い。ぐらぐらする。

 ゆっくりと周りの景色やお母さん達が溶けていく。上からどんどん溶けて、真っ黒になってなくなる。

 駄目だ、駄目だ、大事なものが消えていく。

 悲しくてしょうがなくなって、さっきのお母さんみたいにその場に座り込んで泣く。

 大声を上げて、周りに落ちていた色々なものを投げつけて、鼻水も垂らしっぱなしで、まるで子供みたいだと自分でも思う。

「アシッド、いつまで泣いているの? 男の子でしょう? しっかりして、もうすぐお兄ちゃんになるんだから」

「お母さん」

 お母さんが優しく頭を撫でてくれる。さっきまで泣いてたのが嘘みたいな笑顔で笑っている。

「ほら、立って。家族でお出掛けするんでしょう?」

「うん。そうだったらよかったのになぁ……」

 お母さんが消えた。

 何も残っていない。ただ真っ暗なだけ。

 全部溶けて消えてしまった。

 自分しかここにいない。何もない。

 あぁ、どうしよう。ひとりぼっちだ。

「お母さん。お願いだから、戻ってきて、こんなにいい子で待ってたよ、早く迎えにきてよ」

どこまで夢か→←暗い



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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時

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