優しい人 ページ4
せっかくの来客を待たせるわけにはいかないので、少々急いで玄関に向かう。
「はいはい、今出ますよっと、あぁ、どうも…………」
「こんにちは、帰ってきたみたいだから顔を見ておこうかと思ってね。それより、顔色が悪いみたいだけど大丈夫? まだ若いんだから無理は駄目よ」
「いや、はは。大丈夫、すぐよくなります。貴女は元気みたいでよかったです。これからどこかにお出掛けで?」
「そうなの。友達のお家にお呼ばれしてね、これから行くところなの」
小綺麗な格好をしてにこにこと微笑む初老の女性は、ここの大家でもある。たまにこうして、自分の部屋を訪ねてくる。
自分のことをよく気にかけてくれるとても優しい人。ただそれだけ、それ以上でもそれ以下でもない。そんな感じだった。
人のことを詮索したり、差別したりするような真似はしない人で本当によかった。じゃなかったらここに住まなかったし、この人も生きていなかった。
「それじゃあ、今日はこの辺で。早くいかないと約束の時間に間に合わないわ」
腕時計を見ながら彼女は言う。
「そうですか、気を付けていってください。最近はなにかと物騒ですから」
「ありがとうね。貴方も気を付けて、その目だから…………」
「大丈夫ですよ。一応髪で隠してるんで、すれ違ったり、一瞬だけなら分からないはずです」
「そう、ならいいんだけど…………」
「貴女には関係ないことなので無駄に心配する必要はありませんよ。それより、遅れないようにした方がいいんじゃないですか?」
「え、えぇ。そうね、それじゃあね」
足早に去っていく彼女を見送り、ドアを閉める。
彼女が来てくれたお陰で、少し気分がよくなったような気がした。掃除してしまうなら今だろう。
「さてと……、やるかぁ」
そして、まだ少し異臭のする部屋の掃除に取りかかった。
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時