曰く付きとある収集癖

盗品のノートパソコン ページ9

こちらのノートパソコンは盗品として警察がある男の自宅から回収したものです。

　今はガムテープでぐるぐる巻きにされていて、開くことができませんが、元の持ち主はただの大学生で普通のパソコンでした。

　それがある日盗難にあい、盗難届も出されていましたが警察はこれを持ち主に返すことはできない、そう判断しました。

　なぜ返せなかったか？

　壊れていたからです。ただ、それだけ。

　それだけでしたが、それが大問題だったのです。

　このパソコンが回収されたとき、パソコンは何重にも重ねたダンボールの中へと入れられ、ガムテープでぐるぐる巻きにされていました。

　盗んだ男は、パソコンやテレビなどの画面を異常に恐れていました。

　そして何を聞いてもあいつが来る、と言うばかりで詳しいことは何も分かりません。

　警察は男の部屋から押収したこのパソコンや他の盗品を調べ、男が恐れていたものの正体を見つけました。

　パソコンの画面に映し出された赤い服の女。

　その女の首や手足ははおかしな方向へとねじ曲がり、全身血まみれ、濁った目でこちらを睨んでいる。そんな画像でした。

　これだけでしたら、インターネットに出回っているようなビックリ画像。

　そういった画像を壁紙に設定していただけ、そう思うでしょう。

　しかしそれだけではなかった。

　いくら操作しても、その画像から動かない。電源を切ることもできない。

　24時間その画像が表示されっぱなしなのです。

　どう考えても電池がなくなっているはずなのに、電源が落ちることなく画像を表示し続ける。

　こんな異様な状態で持ち主に返すわけにもいかない。

　そこで、一度分解してどこか壊れているのならそこを修理しようとしたのです。

　早速分解してみると、そこにはとんでもない事実がありました。

　ほとんど部品が入っていなかったのです。

　男は盗んだパソコンを分解し、中身を抜き取って売り払っていました。

　もちろんその部品がなければパソコンを操作どころか起動することだってできません。

　それなのに、赤い女の画像は表示され続けていました。

　結局、修理しようにもできず打つ手なしのまま、巡り巡って私の元へと来たわけです。

　えぇ、今もその画像は表示され続けていますよ。

　どこの誰とも分からない赤い女が、こちらをじっと見ている画像が。

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