ヒトゴロシは語る

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メアリが死んだって知らされたときの会社の男連中の顔、刑事さんにも見せてやりたかったよ。

　みんな自分の女が死んだみたいな顔してさ、揃って俺を責めて、俺はこんなことになるなんて思わなかったとか言ってさ、わんわん泣いて、適当に1ヶ月くらい会社休んでスッパリ辞めた。

　ほら、本当のこと知ってるの俺だけだったし、死んだ女にはもう何の感情もなかったけど、それっぽい感じでやれば、変に怪しまれたりしないかなって思ってさ。

　結局こうやって捕まっちまったけど、警察には捕まりたくなかったからな。

　でも流石に、会社辞めるのはやりすぎだったかもなとは思ってる。

　一応親に紹介してもらったとこだったし、何か悪いなぁって思ったけど、あんなことがあったんだから仕方無いって、言ってくれた。

　そんでその頃にさ、ある映画を見て車であてもなく旅をするってのに憧れて、中古のカッコいい車を買ったんだ。

　塗装はちょっと剥げてたけど、こう、スラっとしてて、とにかくカッコ良かった。

　まぁまぁ、良いから聞いてくれよ。

　こっからが本題なんだから。

　そんでだ、その車に乗って映画みたいにどこまでもどこまでも走って、色々な名所とか、絶景スポットとかに行ってさ、本当に人生においてとても貴重な体験ってやつをしたんだよ。

　青い海の水平線の向こうから登る朝日を見たり、荒野のど真ん中で夕日を見たり、とんでもない崖の先端から下を見下ろしたり、でっかい滝にかかった虹を見たり、とにかく最高だった！

　そんな旅の途中で出会ったのがマリアって女だった。

　へへ。

　ヒッチハイカーだったらしくてさ、何にもないただ長いだけの道の端でアピールしてたのを乗せてやったんだ。

　マリアも同じ映画に影響されたらしくってさ、すぐに仲良くなって話も弾んだよ。

　それで、その映画にさ、あ、男が主人公なんだけど、途中でヒロインのヒッチハイカーを乗っけて仲良くなって……って展開まんまだったから、2人で余計に盛り上がっちゃってさ、その映画の再現をしようって話になったんだよ。

　偶然出会って仲を深めた2人、楽しく走っていたけど車がパンクしてしまって、仕方なく車を停めて岩山に囲まれた人工の明かりのない場所で満天の星空を眺めて、焚き火をして、さらに仲を深めていく……。

　パンクはしなかったけどさ、実際したらすごく困るし、場所も映画にそっくりだったから今日はここで焚き火をしてゆっくり過ごそうってなったんだ。

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