烈火 15 ページ41
あと少し、ほんの数センチなのにナイフに手が届かない。
残念なことに、いくら腕を伸ばしてもどうしてもあと少しが届かなかった。
こちらへと引き寄せようと意識を集中させようにも、痛みでうまくいかない。
「これで終わりです」
レフトの足に更に力がこもる。
足をどかそうとしても人間よりも力が強く、びくともしない。
そろそろ骨が折れそうな感じがする。折れたのが心臓に刺されば、それでおしまいだ。
「モノ、クロ……」
すぐ近くにいるはずのモノクロを呼ぶ。
「自分の力で抜けられるだろ?」
すぐ耳元で声がした。
「見せてみろよ」
楽しそうな声だった。
はっと思い出す。俺の物を引き寄せる力とは別のもう一つの力、使うとかなり消耗するからほとんど使わなくて忘れかけていた。
2、3メートルくらい瞬間移動できる力。モノクロのやつに比べたら地味だけど、今レフトの足から逃げるには十分。
力の消費は大きいが、少し強くなった今なら何とかなる。と思う
やらなきゃ、このままじゃ死ぬ。
落ち着け。
痛いけど、集中。
ここから少し離れたところにいる自分の姿を想像する。
そこに自分は行ける。
大丈夫。
ミシッと嫌な音がした。
同時に視界に写る景色がハッと変わり、胸にかかった圧力が消えた。
「なっ」
レフトの驚く声が離れた場所から聞こえる。
急いで少し重くなった体を起こし、周りの状況を確認する。
移動した位置はレフトの3メートルくらい後方、さっきの場所からモノクロが指した方へ移動していた。
上着の何かしらの効果のおかげか力の消費も少なく済んだようで、問題なく走ることができそうだ。
それに回復力が上がっているからか、鼻血も止まり胸の痛みもどんどん引いて楽になっていく。
「はは、やった」
つい口を出た言葉にレフトが気が付き、振り向いた。
「そこにいましたか」
炎の壁が現れるのと同時に落としたナイフを拾って走り出す。
「待て!」
「待つわけ無いだろ!」
レフトの声にそう返し、先程モノクロが指した方へと走る。
少し遅れてレフトの走る足音が聞こえ炎の明かりが後ろからさしたが、炎は平気だしこちらの方が速いので追いつかれる心配はない。
走る。コンテナの間を抜けとにかく走っていく。
不意に背後に迫っていた炎が消えた。そしてランタンの軋む音と足音が離れていく。
何故? 考えながらも足は止めない。
47人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凪 - ネタ帳からきました。待ってやっぱりモノクロ好っきぃ!!! (2021年12月25日 21時) (レス) id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
ふな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張って下さい! (2021年7月24日 20時) (レス) id: eed263cb5f (このIDを非表示/違反報告)
Cry cry - 続きが楽しみです。がんばりんごー! (2021年6月22日 16時) (レス) id: 72089608d6 (このIDを非表示/違反報告)
ソウルズ(カービィ)LOVE(プロフ) - ワーッ!(?)どうも!はじめまして!読ませて頂きましたが、すんごく面白いです!頑張って下さい!応援してます! (2021年6月18日 21時) (レス) id: 604407214b (このIDを非表示/違反報告)
まきぴろん(プロフ) - 遅れてごめんなさい(汗)完成しました!!ありがとうございました。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 24af0dff4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:衛生兵079 | 作成日時:2020年11月2日 14時