MJ～remix～part 2【潤くんハピバ短編集】 (ページ38)

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あれから一週間。毎晩、彼と出会ったお店に足を運んだけれど

一度も。潤は、現れなかった。

どうせ、遊ばれただけだったのかなって

思っても、そんなにショックは受けなかった。

会ったのは2回だけで、燃え上がったのは一瞬で

けどその短い時間の中だけでも、潤が私にくれたものは、大きかった。

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その日の私は、人事部に上司から受けた被害を伝えて対応を求めて

そうそう、もう未練がましく付けてた指輪も外してしまった。

少し、気持ちが楽になった気がする。

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リセットボタンを、押したような気分だった。

嫌なこと全部消え去って、全部がまっさらの状態で

重たいもの全部下ろしてしまった代わりに

からっぽになってしまった心に今度は何を詰め込もう

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そんなふうに考えるあたり、私は確実に現実逃避気味で

そもそもリセットボタンなんてどこにもないんだという当たり前の真実を見落とすぐらいには

雲一つない青い快晴に心奪われていた。

障壁など何もない、どこまでもいける自由と引き換えに

何も頼れるものがない孤独を併せ持った悲しみを

視界に広がる空は何より雄弁に物語っていたのに。

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『話がある』

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短い、たったそれだけのメッセージは恋人だった男性からのもので

呼び出しに応じた私は何を考えていたのか

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油断。曲がりなりにも愛というモノを囁き合った仲だ、悪いことは起こらない

憐れみ。私にフラれた彼を可哀想に思う心があった

罪悪感。私が別れを切り出したこと、それに彼の頼みを無視して我慢しなかったこと

愛情？……もし、彼が自分が間違っていたと謝ってくれたならあわよくばって気持ちもあったのかな。

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呼び出されたのはどうしてこんな場所に、と思うほどに誰もいなくて

唯一の外灯がチカチカと今にも切れてしまいそうな侘しい小さな公園で

彼を待ってる間、何度も脳裏によぎったのは真っ白なお酒とダイヤのきらめき

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“―――ごめん、ね”

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唐突に思い出した声は、そうだ

あの朝。眠くてまだ半分眠ったままだった私に潤が言った

別れの言葉だ。

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「A」

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名前を呼ばれて、それがかつての恋人の声だと認識して振り向くのに、たいした時間はかからない。

それなのに、振り向くより早く突き飛ばされたのは

初めから、明確な意思をもって私を突き飛ばそうと彼が考えていたからだろう。