MJ～remix～part 2【潤くんハピバ短編集】 (ページ23)

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「…………椎名さん……？」
エレベーターから降りてきた彼は。
迷わず私の手を取った気がした。
そして、そのまま無理やり乗せるような形で長岡さんの口の開いた表情なんて目に入っていない様子で
私を連れだした。

握られた手はいつの間にか離されて、放心状態の私の顔を覗き込んだ。
「顔色悪いよ？」
「大丈夫ですよ。」

再び右手を握った。
そのままエントランスホールを横切る。
頭が追い付かないまま、ついていく。

何がしたいのか、何があったのか
何もわからず、何も考えたくなかった。

「あれ？潤君、どこ行くの？」

偶然居合わせたのは櫻井さん。
そんな櫻井さんに挨拶すら返さず
手を引いたまま横切っていく。

何も考えなかった私は愚かで。
すぐさま、手首を掴まれた。

すべてを予感して計画を立てていた松本さんは
櫻井さんが掴んだ私の手を掴んで引き離そうとして

それでもなお離さない櫻井さんと
私を自動ドアへ引っ張る松本さんと
櫻井さんの爪が食い込むくらい、手首を握られて。

目に映る、そこにあるのは、私への望みと松本さんへの望み。

「無視しないで返事してよ～。」

「翔さん離して。」

「返事しろって！」

「離せ。」

櫻井さんは私から目を離さなかった。
目が言う、また傷つける気かと。

思いは伝わらなかったのかと。すべてが怒りになって。怒りを超えて
哀しみになって。
だから気が付かなかった。

「翔くん、松潤行きたがってるから手はなそ。ついでに俺が事情も話す。」
「はぁ？」

櫻井さんの背後から大野さんが腕を掴んで
一瞬緩んだ手の力を見逃さず松本さんは腕を振り払って再び右手を取った

「走って！」
そのまま外へ飛び出した。

この前来た店の前に、男の人が待っていてこの前とは違う通路から店内へ入る。

賑わっている店内の喧騒がどこか遠くに聞こえた。
ぼんやりしているうちに、いつの間にか目の前にグラスが置かれて

「椎名さん？」
「松本さん……」

大丈夫？そう言いたげな目が私を捉えて離さない。
なんだろう。こんな、きれいな目していたんだ。

今まで、気が付かなかった。ほとんど、二宮さん見ていたから。
そう、見ていた。

彼を見ていた。
仕事だから、すべての行動を逐一見ては報告して
だから。彼の仕草や癖まで見えてきて、そのたびに心が切なく音を立てて染まっていった。