第1話 ページ46
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春風に桜が舞う。
ひらひらと、まるで雪のように。ふわりふわりと、そこだけ時間がゆっくりと流れるように満開の桜が川沿いの道に暖かな光を振り撒いている。
歩を進める私は先日届いたばかりの制服を身に着けていて、まだ着慣れず固い布地と共に妙な緊張感を抱えていた。
昨日は色々と考える事があって、あまり良く眠れなかったのだ。今日から始まる新しい生活への期待と不安、新しい環境に上手く馴染めるだろうか、とか。これからどんな毎日が待っているのだろうか、とか。
考えても仕方の無い事ばかり考えて、挙句に眠れなくなってしまって。結局、私は明け方まで起きる羽目になってしまったのだ。
けれど私には日課があったから、さして時間の流れは遅く感じる事は無かった。夜通し書き綴った手紙は今この手の中にある。
舞い散る桜を眺めながら風に揺れる自分の髪を耳にかける。…やはり緊張しているみたいだ。ショートカットに触れる指は小さくだが震えていた。
震える指先に注意しつつ歩み続ける私に不意に強めの向かい風がザァと吹いた。
「あっ…!」
手にあったはずの便箋が風に舞い、私は思わず声を上げた。軽い便箋はふわりと上へと舞い上がり、少し先にパサリと落ちる。
(早く拾わないと…!)
もう一度風が吹いてしまえば次はもっと遠くへ飛んで行ってしまうかもしれない。そう思い私は手紙の落ちた元へと慌てて駆け寄った。
と、私が手紙の元へと辿り着くとほぼ同時のタイミングで前方から歩いて来たであろう男性が私の手紙を拾っていた。
「え…?」
男性は黒を基調としたスーツを着ており、太陽に照らされた銀髪がキラキラと輝いている。多分、染めたとかではなく地毛なのだろう。所々で外側に跳ねた毛先が印象的である。
だけど、私は…
「A」
これは…何?
何の映像?この人は…誰?
どうして…
「…何、で」
ポロポロと涙が頬を伝う。何故、こんなにも懐かしいのか、こんなにも切ないのか。泣いている理由が分からなくて、だけど止めどなく溢れる涙が確かにそこには在って。
暫く手紙を見つめ続けていたその人は私が泣いているのに気付いたのか、顔を上げてギョッとしていた。
「何で…何で……?」
その答えは見つからない。ただ困惑した様な目の前の彼の様子だけが私を更に混乱させるばかりだ。
___これが、私達の出会いだった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時