見舞い ページ40
「な、んだ…」
てっきり銀さんかと思いましたよ、私は弱々しい笑みを浮かべてその人を見上げた。タイミングが悪過ぎる、こんな時に紛らわしい現れ方をするから期待してしまったじゃないか。銀さんが帰って来てくれたのかと思ったじゃないか。
私が横たわったままなのを見て起き上がれない事を察したのか、高杉さんは窓から降りてベッドの上に腰を掛けた。ギシ、と軋む音がする。続けざまに神威さんも同じように窓から入って来る。
「不法侵入ですよ」
「見舞いの時間が短ェのが悪ィ」
「お見舞いなんですか、てっきり襲撃なのかと」
ククッ、と喉を鳴らして嗤う高杉さんは「襲撃ならこんなに優雅じゃねェな」と、確かにもっともな意見である。前に見た時より長くなった高杉さんの髪が夜風に揺れた。
「ねぇ」
すると、先程まで一言も喋る事なく黙っていた神威さんがボフッと布団の上に何かを押し付けてきた。これは…、
「女の好きな物なんて分かんないから、花なら良いかなって」
「ありがとうございます、大切に飾りますね」
渡された綺麗な色とりどりの花に私は笑顔を浮かべた。殺風景な病室に少しの華やかさが出た様な気がして嬉しい。笑顔を向けると神威さんは苦い顔で「ホントは病院とか苦手なんだけど」とこぼす。
「俺は別に用事無いし帰って良い?」
「勝手にしろ」
「じゃあ勝手にするね」
と、神威さんは「お大事に」と言って窓の外へと帰って行った。本当にお花だけが用事だったのだろうか、首を傾げる私に高杉さんは「アイツは気まぐれなんだ」と顔をしかめる。
そして高杉さんは神威さんの持って来てくれた花束を花瓶に生けてくれた。何も言わずに黙って生ける後姿を眺めて私は口を開く。
「高杉さんは…何をしに来たんですか?」
「だから見舞いだ」
「それ…嘘ですよね」
そもそも何故敵対していた高杉さんが私の見舞いに来るのか。いくら真選組が解体した後とは言えども一度は刃を向け合った関係だ。あの時殺し損ねた私にとどめを刺しに来た、と言われた方が納得出来る。
振り向く高杉さん、その表情は何とも言えない。目を細めて小さく息を吐くと、花瓶を置いて再びベッドの上に腰を掛ける。そして、暫く私の顔を見つめて口を開いた。
「大切な人間を…銀時を失った気分はどうだ」
どうやらこれが本題の様だ。真っ直ぐに私を見据えるその目に何の悪意も感じる事は無く、その答えを本当に知りたい様であったから私も正直に口を開いた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時