七転び八起き ページ38
隊長が私の手を握り締める。温かい…上手く動かない冷たい指先に熱が広がる。
「心配するんじゃねェ、そんな簡単に死んだりしねェから」
もう片方の手が頬に添えられ、指先が肌を滑る。私は「大丈夫です」と笑った。少しずつ確かに削り取られる命を感じながら。…もう長くない事は分かっている。
窓の外はまた曇り空だ。もうこんな暗い空は見飽きてしまった、そろそろ晴れ渡る青空が見たい。銀さんと一緒に…見たい。
「隊長」
諦めずに追い続ければ、いつか夢は叶うと。それは本当にそうなのだと思う、タイミングと気持ちが合えば、きっとそうなる。私の場合は…少し遅かったのかも知れない。
「七転び八起き…ですね」
私は転ぶのが怖かった、七回転ぶ勇気が無いから動かなかった。だけど、今なら分かる。自分から動かずに受け身の姿勢でいたって転びはしないが、起き上がるチャンスもない。
それが一番愚かなのだ、と。
「七回転んでも八回目があるのなら転んだって良かった。何もしないよりその方がずっと良かった。転ぶ事を恐れた私には…八回目が存在しないんですね」
遠くを見つめて自嘲する様に笑う私の言葉に隊長は何も言わなかった。ただ、触れた隊長の指先が震えているのが分かった。
『また、明日』
銀さんと約束した『明日』は何処に在るのだろうか。私には明日が在るのだろうか。弱っていく精神と身体は明日を迎えられるのだろうか。
神様はちゃんと見ているのだ。私が愚かだったと知っているのだ。だから、私は不幸なんかではない。これは『罰』である。
銀さんに、会いたい。
今はもう…それだけなんだ。
96人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時