慟哭の叫び ページ9
「クククッ…やっと王子様のお出ましかァ。美しき綺麗事ばかりの物語だなァ」
高杉さんは刀を強く握り直し銀さんを見据える。既に私はもう眼中にないらしく、かつての仲間である銀さんとの対峙を楽しんでいる様に見えた。
「高杉」
銀さんは木刀で高杉さんの刀を振り払い、距離を開けて私を銀さんの背に隠す様に立つ。高杉さんは振り払われた刀に目を向けることなく銀さんを薄い笑みで見返し口を開く。
「昔から変わんねェな、てめェは。真っ直ぐに前を向いて振り返りやしねェ、反吐がでる程だ。そんなに綺麗事ばかりのこの世の中がお気に入りか?」
「そうだな、つまんねェてめェの理想郷よりはよっぽど価値があると思ってるよ」
「ククッ…それでも勝った方が正義だ」
「まーな」
でもよ、と銀さんはいつも通りの死んだ魚の様な目に一筋の力を宿して高杉さんに語りかける。
「俺ァお前らが何しようがどうだって良いよ。ヅラの馬鹿げた攘夷思想も辰馬の享楽ぶりも俺の人生にゃ関係ねーし、それが本人の叶えてェ理想に叶ってんなら別に邪魔する気もねェ」
銀さんはそこで一度言葉を区切ると私を振り返った。一瞬だけ目が合って銀さんは目を伏せて口元に穏やかな笑みを浮かべる。こんな状況で非常識だとは思うが、ドキリと胸が鳴った。
「てめェがやる事だけはどうしても許せねェ。大切な人がいなくなった世界はもう要らねェ?笑わせんじゃねーよ、ガキかてめェは」
「…。」
「失くなったモンねだってどうする、アイツが繋げたモン壊してどうする、…俺達が継がなくてどうすんだよ」
最後の方は語気が強くなっていた。それだけ銀さんは今どうしても高杉さんに届けたい言葉があるのだろう、それだけ高杉さんが銀さんにとって大事なのだろう。
大切じゃないのなら、きっともうとっくの昔に見捨てている。だけど銀さんは今もこうして高杉さんの手を引こうとしている、彼が望む世界ではないのかも知れないが…彼が少しでも幸福になれる世界へと。
やっぱり…銀さんは優しい。
「高杉、いい加減目ェ覚ましやがれ。どう足掻いても…もうあの頃には戻れねェんだよ」
「…るせェ」
「もうこんなガキの夢物語は終わりだ、前を見やがれ」
「…うるせェよ」
「過去に囚われるな、今を受け入れろ…!今を…生きやがれッ!!!」
「うるせェッ!!!!!」
ビリビリッと空気が震えた。鼓膜が破れるかと思うほど高杉さんは大きな声で叫んでいた、こんなに取り乱す姿は想像もしなかった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時