壊れた世界に ページ7
「それで…高杉さんは本当に幸せになれるんですか?」
例え世界を壊したところで失った物は元には戻らない。死んだ人が生き返る事もない。結局それは自己満足にしかならないのだ。
「そんなのはエゴです」
キッと睨み上げれば高杉さんは「そうだ」と短く答える。それが分かった上で彼は世界を壊したいと望むのか。
壊れた世界に取り残され、何もかも失ってまで彼は何を望むのか。たった一人の大切な人の喪失が彼をここまで突き動かすのか。
「本当は初めから何もなかったんだ。全部を失って俺はようやく戻る事が出来る」
「それは…どういう」
「また、初めに帰るだけだ」
____壊れた世界に祝福を。
どれだけ願っても、もう笑えない。もう欲しかった幸せは失われた。歩いて来た道は崩れ去った、もう…失うのにはうんざりだ。
それならば。
初めから無かったことにすれば良い。何も持たなければ失う事もない、それでようやく過去は清算される。
_____ドンッ。
「え…?」
高杉さんが私を突き飛ばす。ゼロに等しかった距離が遠く、離れた。事態が飲み込めぬまま私は揺らぐ手を真っ直ぐに伸ばす。
その視界に映るのは憎しみに囚われた人間の末路だ。刀を構えて私へと刃を向けた、狂気を携えたその人。
(私は…ここで死ぬのでしょうか)
こういう時、景色はスローモーションで見えるらしいというのは本当だった。口元を歪ませた高杉さんがゆっくりと動いて見える。
走馬灯___と言うのか、頭の中を占めるのは皆の笑顔だった。隊長、副長、局長、山崎さん、隊士のみんな。新八くん、神楽ちゃん、…そして、銀さん。
(みんな…)
もう、剣先は目の前に迫っていた。今更ホルダーに手を掛けても、もう遅い。間に合わない。
(銀さん…)
伝えたい事は山程あるんだ。だけど、何一つ言えぬまま、素直になれぬまま。臆病な自分を認められないまま…わたしは死ぬ。
(大好きです)
最後に頭に浮かんだのはそんな簡単な言葉。簡単だけれど一番言えない言葉、どうして一番言いたい言葉は絶対に言えないのだろうか。
私はぼんやりと…恍惚とした高杉さんの目を見つめ……そして、目を閉じた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時