愛した世界で ページ6
(落ち着け、取り乱すな)
心の中でそう唱えた。少しでも動けば高杉さんの当てる刀が私の腹部を切り裂くだろう、ピンと張った空気が漂っていた。
私は無言で高杉さんを見上げる。高杉さんは依然変わらない冷たい瞳に三日月形に歪ませた口元を貼り付けて「どちらの差し金だ」と口にした。
「どちらの…?」
「真選組と、銀時と」
「ぎ、ん…さん?」
想定外の人物の名前に私は正直に目を丸くした。高杉さんは「真選組か」と呟いてククッと喉で嗤う、どうして今銀さんの名前が出てくるのか。…もしかして、
「まさか…桂さんと銀さんの」
「勘が良いようで何よりだなァ」
高杉さんは腰に回していた手をスルリと滑り上げて私の頬を長い指でゆっくりと撫でた。ゾクリ、と走る悪寒。綺麗な所作と裏腹にとても狂気染みていた。
高杉さんはすごく綺麗な顔立ちをしている、それこそどこかの役者さんだと言われても信じてしまうほど。だけど…どうしてなのだろうか、私には彼がとても哀しそうに見えるのだ。
しかも、どこか銀さんと似ているとも。
「貴方は…どうして、そんなに…哀しそうな顔で」
「哀しそう?この俺がか?」
「どう、して…」
この感覚は言葉に出来ない。ただ、ただ…触れた手から伝わる悲しみが私の体中を駆け巡るようで、その熱から伝わるのは酷い憎しみだ。私は我慢出来ずに涙をこぼす。
「変わった女だなァ…恐怖でもねェ、怯えでもねェ。どういうつもりだ」
「わ、かり…っ……ませ、ん」
この人の目を見ていると囚われそうなのだ。まるで世界の全てを飲み込んでしまうかのような深い悲しみと憎しみが…私にも伝わってしまうようで。心が痛かった。
高杉さんは目を細め「お前は…大切な人を失った事はあるか」と、静かな声で聞いた。僅かに刀が当たる力が強まる、私は小さく首を振った。
「俺も、ヅラも銀時も…大切な人を失った。先生を失わせたこの世界を憎いと思って何が悪ィ?こんな世界…要らねェだろ」
「要らないから…壊すんですか?」
流れる涙を手の甲で拭いながら問い返せば「あぁ」と迷いない返事、それすらも悲しい。
私は大切な人を失った事がないから高杉さんの気持ちは分からない。だけど、失ったからと言って世界を壊してしまうだなんて、それは間違っていると確かに言える。
例えばそれが失われた人の愛した世界なのだとすれば…私はこの身を掛けて全霊で守りたい。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時