素直になりたい ページ39
銀さんは私の手をじぃと見つめながら「もし俺が居ねェ時に何かあっても知らねーぞ」と口を尖らせる。
「そういう時は銀さんが来てくれるじゃないですか、絶対に」
前の鬼兵隊での高杉さんと対峙した時がそうだった。銀さんが助けに来てくれた時、あの時も銀さんは優しかった。最後まで私を守り通してくれた。銀さんは「…そーかよ」と呟いて懐に手を入れた。
「ほら、ご褒美だ」
「これ…」
取り出されたのは綺麗にラッピングされた縦長の箱であった。銀さんは「今日、ホワイトデーだろ。この前のお返しだ」と。
「開けて良いですか?」
「もうお前のモンだろ、勝手にしろ」
やはり照れ臭いのか銀さんはそっぽを向いている。また笑うと銀さんはきっと怒るから、それに対する笑いを堪えながら私は箱のリボンを解いた。
「…可愛い」
「そーか」
箱の中に入っていたのは桜をモチーフとした綺麗な簪であった。一体どこにこんな高価そうな物を買うお金があったのだろうか、無粋だから聞かないけれど。
「わざわざ買ったんですか?」
「すごいね、お前!誰かからパチったとでも思ってんの!?」
「いや、そうじゃないですけど…」
だって銀さん万年金欠だし。銀さんは「この前パチンコで大勝ちしたんだよ!」と決して自慢にならない話を自慢気に披露した。仕事で稼いだお金で買えば私もこんな事思わないのに。
「仕事で稼いだ金を効率良く増やしてんだ、元手は一緒だろーが」
「それ以上に負けるのがギャンブルですよね」
「その分ドキドキとスリルが買えんだよ」
「お金は大切にして下さい!!」
そう言い放つと銀さんはシラけた表情で「嬉しくねーなら返せ」と睨み付ける。私はハッとなって箱を握り締めた。
「折角お前が普段あんま女らしい格好とか出来ねーから、せめて頭ぐれェはって思ったのによ」
銀さんは頭をガシガシ掻くと今度は困ったように口を開く。
「女が喜ぶモンなんか分かんねーよ、あんまし期待し過ぎんな」
「違います!嬉しいですよ…!!」
私は素直に喜べなかった自分を呪いながらそう叫んだ。嬉しい、嬉しいのだ。嬉しくない訳がないのだ、この簪も銀さんの気遣いも、嬉しくて仕方ないのだ。
けれど私は素直さが足りないから、それが上手く言えなくて。可愛くない言葉に逃げてしまって…結果、銀さんを怒らせてしまう。いつも、やってしまう。だから今日だけは、
「あの…銀さん」
「なに」
「着けて…くれませんか?」
少し、素直になりたい。
79人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時