一寸先の光 ページ36
「んむ…」
もぐもぐと銀さんは無言で口を動かす。私は掴まれたままの手をそのままに銀さんの反応を窺う。美味しい…だろうか。
無言で口を動かしていた銀さんはゴクン、と喉を鳴らすと私の顔を見つめた。ドキン、と胸が高鳴る。
「…どうですか?」
「何つって欲しい?」
「銀さん!!」
「あはは、悪ィって。怒んなよ」
ふざける銀さんは「美味いよ、思った以上に美味かった」と笑った。私は「本当ですか?」と不安に思って見上げる。「本当だよ」銀さんはくつくつと笑った。
「良かったぁ…」
ようやく安心して肩から力を抜けば銀さんは面白そうに笑っていた。そのまま今度は自分の手で箱に入っている残りのガトーショコラにも手を伸ばす。「美味い、美味い」と言いながら、あっという間にガトーショコラは無くなった。
「はぁ〜…満足」
「それは良かったです」
「また作ってくれよ」
「来年ですか?」
銀さんはニシシと笑うと「来年とかじゃなくて俺が食いたい時」と。とんだ時間外労働である、私はむぅ、と口を膨らませる。
「銀さんだって料理上手なくせに」
「なら交換で良いじゃねーか、それなら納得するだろ?」
「まぁ…それなら」
私は銀さんの目を見て、互いに笑い合った。何だかくすぐったい、でも…とてつもなく幸せな気もする。銀さんはひとしきり笑うと「よっ」と言って立ち上がった。
「じゃ、今日はもう帰ェるわ」
「お気を付けて」
「俺を誰だと思ってんだよ」
ツン、と額を人差し指で突いて、銀さんは「また、明日」と帰って行った。私も「また、明日」とその背中に声を掛ける。高く澄んだ空は赤く広がっていた。
***
「随分と仲良さ気だな」
銀時が廊下に出てすぐの所に土方は居た。背中を廊下の柱に預け、フッと笑みを浮かべている。銀時は頭をガシガシと掻きながら「盗み聞きたァ悪趣味な事で」と苦笑した。
「ウチの可愛い隊士だからな。心配になるんだよ、親心みてェなモンで」
冗談めかして笑う。銀時は「心配しなくても、」と土方を見やった。
「てめェの思うような事にはなんねーよ」
「は?」
それは、と言葉を紡ぐのははばかれた。銀時は本気だ、冗談なんか言っていない。ただ、愛おしそうに今出て来た部屋の方を見つめていた。
「そんな訳で沖田君にもヨロシク」
「お、おい…」
ヒラリと土方の声をかわして銀時はその場を立ち去った。
「万事屋…?」
一体何を考えて…、一人呟く声は夕暮の中に消えていった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時