リーダーの資質 ページ4
「変ッスね…」
ジロリ、来島さんは私を見つめて…私は震える手を握り締める。まだここに来たばかりだと言うのに、もう失敗なのか。横目で山崎さんを見れば彼も強張った顔をしていた。
「武市先輩の独断ッスかね」
「え?」
「精々しっかり働くッス」
やがて放たれた言葉は存外あっさりとした物であって、来島さんはポンと肩に手を置いてニカッと笑う。…どうやら上手く切り抜けられたらしい。
私は手の甲で冷や汗を拭うと小さく一息を吐いた。結構本気でもうダメかも知れないと思ったのだ…最悪の場合も考えたりした。
(怖いな…心臓がうるさい)
ドクッドクッ…耳の直ぐ側で聞こえるのではないかと錯覚しそうだ。現場に来て初めて抱く遅過ぎる恐怖、たった一言が、たった一動が私の命を脅かす。それが嫌という程に分かってしまった。
私は「はぁ」ともう一度溜息をこぼし…未だに落ち着きを取り戻せない心臓の音を、感じて。そして…そして、
「…来島」
「晋助様!!!!」
「!」
出会ってしまった。
攘夷派最強と謳われる高杉晋助に、出会ってしまったのだ。
彼は他の幹部組とは遅れて一番最後にやって来た、来島さんを誤魔化すのに夢中になっていて私達は彼が直ぐ側に来ていた事に気が付かなかった。
「お疲れ様ッス!」
「あぁ」
これが高杉さんとの初対面なのだが…私の印象は寡黙な人だなぁ、という物であった。確かに噂と違わず綺麗な人、というか…どこか浮世離れしているのだが、この大きな鬼兵隊を纏めるにしては口数が少ない。
自分のところがそうだからなのか、やはり大将は皆を引っ張る人…いや、それは高杉さんにも当てはまるかも知れないが、もっと積極的に隊士に話し掛けるイメージなのだ。
だが、見たところ高杉さんはそのタイプではない。積極的に皆に話し掛ける感じでもなければ、素っ気ないと言うか冷たそうと言うか。
避けられているというよりも…
高杉さんは来島さんと二、三言交わすと羽織っていた薄手の羽織を私に投げた。「え、」と反射的に思わずそれを受け取ってしまう。
「後で俺の部屋に届けてくれ」
「え、…えっと。」
「ちゃんと忘れずに持って来るッスよ!」
それだけ言って二人は私の返事も聞かず去って行ってしまった。…いや、ちょっと待って。これはマズくないでしょうか。
渡された羽織を見下ろして、わたしは呆然とその場に立ち尽くすのだった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時