拝啓××様 3【銀魂】 (ページ26)

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ほんの少しのすれ違いページ26

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「よっ」
「きゃっ…！」

トスッと背後から優しく落とされた手刀、午前の見回りが終わって隊長と別れた後、いつも通りに銀さんは甘味処へとやって来た。

銀さんの顔を仰げば「今日は何食うの」と至っていつも通り…いや、少しばかりいつもよりも上機嫌であった。どうしてかな…、

(…お妙さんが渡してたアレは多分)

こんな日だ、どういう意味であれチョコレートを渡す人は多いであろう。ましてや銀さんはかぶき町の顔役みたいな所だってあるし、お妙さんは新八くんのお姉さんな訳だし。

別に…何ら不思議ない、そこにどんな意味が込められていても。不思議な事なんて何一つ。

「今日は…やめておきます」
「は？何で？」
「屯所で沢山チョコを作りまして…それで、結構甘い物ばかり食べたんです」

嘘…、ではない。
本当にチョコレートを食べていたし、甘い物は少し飽きてしまったし。だから…今は食べたくない。胸がいっぱいで甘い物はそういう時、喉が焼ける様な味がするのだ。今は、どうしても食べられない。

「あー…そういや今日はバレンタインか」
「…。」

そういやも何も貰ってたじゃないですか、口に出したらキツい言い方になりそうだ。だからグッと飲み込む、今気付いたと言わんばかりの銀さんの顔から目を逸らして。

「んで、お前も作ったんだ？」
「えぇ…皆さんには、…お世話に、なってますからね」

銀さんにも作ったんですけど、ね。たぶん私は渡せないと思うけど。あんな美人な人の作ったチョコレートに太刀打ちする方法なんて無いのだから。

歯切れの悪い私の言葉に銀さんは気付く事なく「そういやお前の手料理って想像付かねーな」と。何でこの話題がここまで引き伸ばされるのかな。

「普通ですよ、上手くもないし。美味しいのかも良く分かんないですし…」
「食ってみてェ」
「え？」
「どんなんか気になるしよ」

どんなん…て。
タイミングの悪い銀さんの言葉に「振舞うほどでは」と口ごもれば「でも隊士のヤローには食わせるんだろ」と。元より銀さんにも用意はしてあるのだが。

「沢山作ったってんなら俺にもくれ。前にも言ったけど俺は手紙とチョコを天秤に掛けられりゃ断然チョコだ」
「蒸し返しましたね…！」

何でこんなに執着するのか。私は一人こっそりと溜息を吐くと…「じゃあ今日は屯所に寄って下さい」と。モヤモヤする気持ちを抑えながら折れたのであった。