仕事以外も色々、ね ページ23
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ぼんやりと長閑な空を見上げる、2月の寒空には似つかわしい高い空、平和だなぁだなんて思う。特にあてもなく歩いていた俺は背後から掛かった「銀さん」と呼ぶ声に足を止めた。
「お妙か」
「何ですか、そのガッカリした顔」
いや?と何でもない様に言った、まさか別の人物を期待していただなんて口走った矢先にはこのメスゴリラの良い餌食になるだろう。
「誰がメスゴリラですって?」
「わー怖いなぁ、お妙さんったらいつから人の心読める様になったんスか。それで一発儲けたら道場の再興もあっと言う間っスねぇ、じゃあ俺は用思い出したんでこれで」
そそくさとその場から立ち去ろうとする俺、だってもう拳を振り上げてるもんコイツ。あとアレ振り下ろすだけだもん、ヤダヤダ。
しかし、その拳は振り下ろされる事なく小さな溜息だけがこぼされた。一体なぜ、と思いながら今一度お妙の顔を見れば「そういうこと言う人にはあげませんよ?」と。何を??
「え、何かくれるつもりだったの?お前んトコのキャバクラのクーポン券??だったら頂戴」
貰えるモンは貰ってやらァ、片手を差し出すがお妙は変な顔で俺を見つめる。
「はい?銀さん…本気で言っているんですか?普通あげると言えば他にあるでしょう」
ほら、2月ですよ今。お妙は訝しげな顔をしていた。そのワードにようやっとピンときた俺は「14日か」と納得した気持ちで呟いた。お妙の表情が険しくなる。
「毎年あんなにうるさくしていた割に忘れるんですね、銀さんでも」
「まぁ…最近ちょっくら忙しくてな」
「仕事ないですよね」
「色々あんの、仕事じゃなくても」
確かに仕事じゃない、でも色々と考えたい事があったのだ。お妙の怪しむ視線に鋭ェ女だこと、心の片隅でそう呟く。数秒後、お妙は「取り敢えず私からです」とラッピングされた箱を俺に突き付けた。
「あのよ…これ何よ」
「そうですねぇ、チロルチョコの詰め合わせですかね?私も中見てないですけど」
「お前からじゃねーじゃん、『すまいる』からじゃん」
箱にはご丁寧にも『これからもご贔屓に』の文字、メイド喫茶でももう少しマシな事を書くだろうに。例えば『メイドの手作りショコラ』的な謳い文句とかさ。
「まぁ、お前の手作りならクソ要らねェから安全か。逆に」
「何か言いましたか銀さん」
「あーハイハイ、ごめんなさいね。良い子だから拳をそのまま仕舞おうか、ね!」
冷や汗がダラダラ流れる、濡れた着流しに冷たい風は辛い。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時