拝啓××様 3【銀魂】 (ページ21)

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徹夜で狂ったページ21

「チョコですね」
「そんな初歩的な事ァ聞いてねーよ」

隊長の手に乗るのは小さなチョコレート、手のひらサイズのゴリラがバナナを食べている私渾身のチョコレート作品である。

「ズーロジーかよ」
「ちゃんと手作りですよ、買って来たんじゃありません。これは局長宛です」
「共食い…」

呟いて深い事を考えるのは止めた、多分近藤さんは「え？Aちゃんチョコくれるの！？嬉しいなぁ～」と、想像しうる限り喜びそうなので大丈夫なのだろう。続いて別のチョコを俺は手に取る。

「コレは？」
「それは副長宛です」
「道理で」

こう呟いたのも無理はない、何故ならこのチョコレートからは明らかに異臭がするのだ。何やらビネガーと言うか、酸っぱいような。多分、アレである。

「同じ油分ならイケるかなぁ～と、無塩バターの代用品として使ってみました。マヨネーズを」
「イケる訳ねーだろィ」

Aの妄言に頬が引きつる、何だこの闇の深いチョコレート共は。徹夜で頭がおかしくなったのか、他にも色々と気にかかるチョコはあったが、もう触れるのは止めた。内容を聞くのが怖ェ。

微妙なチョコを作り、どこか自信満々なAに目を向けて…「はぁ」と溜息をこぼす。折角の本命チョコを作れというアドバイスも無駄にならなければ良いが、と形だけは綺麗なガトーショコラにどんな闇が潜んでいるか不安になる。まぁ、いつものAの腕前なら大丈夫か。

「取り敢えず、ちったァ寝ろィ。その汚ねェ面で旦那んとこ行く気かィ」
「でも、隊務が…」
「これも仕事でィ、隊長命令だと受けなァ」

副長みたいな事を言う、と私は苦笑いを顔に浮かべた。ズキズキと昨晩の頑張った勲章とも言える頭の痛みに耐えながら「少しだけ…寝ます」と小さく笑った。

＊＊＊

そして、それから小一時間ほどの休息を取って本日の隊務に私は勤しんだ。町を見回りながらバレンタインという今日を存分に楽しむ町中の人達をパトカーから眺める。隣では隊長が運転をしながら「そんで、どうやって渡すんでィ」と。

「そこなんですよねぇ…問題は。どうせ渡すなら、こうびっくりさせたいんですけど」
「ケーキが爆破するとか？」
「作った意味」

そういうのではなく、と私がこぼすと隊長は本当に思い付きの様に「じゃあ、これはどうでィ」と意外な妙案を差し出したのだ。

「ウチに招く」
「ウチ…？どういう意味です？」
「真選組の屯所に旦那を招くんでィ」

それは…思い付かなかった。