義理でも友でもない ページ19
「俺のじっちゃんが知らねェ輩から貰ったモンは食うなつってた」
「その教えを18になっても守っている隊長はさぞかし良いお子さんだったんでしょうねぇ」
軽口を叩きつつチョコレートを混ぜ混ぜ、この茶色い液体をもう何時間も見ているのかと思うとノイローゼになりそうだった。
「怖ェからAが毒味してくれィ」
「食べないなら貰わないで下さいよ!」
何とまぁ驚いた事にバレンタイン前日である今日、既に隊長は紙袋いっぱいのチョコを貰っていたらしい。隊長の抱えるソレに目を向けて私は「毒味って言いましても…」と、正直チョコは見飽きた。
「誰か他を当たって下さい、今現在進行系で糖分を欲している様な人を」
「…ふーん」
まぁ、こんな時間からチョコを食べたい人が居るとも思えないが。時計の短針は既に11を通り過ぎているのだから。
混ぜ終わったチョコを丸めて、冷蔵庫に突っ込んだところで隊長が口を開いた。どうでも良いが冷蔵庫内をチョコが占拠しており軽いチョコレート軍団みたいである。
「例えば…旦那とか?」
「はい?」
「今現在進行系でチョコレートを欲している奴ってのは」
カチ、と時計が鳴る。
丁度深夜0時を迎えた瞬間であった。
隊長は何やらニヤニヤとして「そうか、今日はバレンタインだったなァ」とこれまでのやり取りで散々話したであろう事をわざわざ口にする。
「そう言やあ去年はチャイナにすらチョコを恵んで貰えなかった旦那が血の涙を流してたんだっけねェ、いや〜可哀想、可哀想」
「…。」
とっても…わざとらしい。
隊長は楽しそうに私の周りをくるくると回り始めた。軽やかな足取り、段々スキップになって…「最近は義理チョコだとか友チョコだとか逃げ道があってしゃあねェな」とか言いながら。
「銀さんを可哀想だと思うのなら…その紙袋からどれか一つ恵んであげてはどうですか?きっと、とっても喜びます」
「それよか何処ぞの誰かさんが深夜帯まで頑張って作ったチョコの方が良いんじゃねーの?」
「…。」
私は黙りこくった、確かにあげたいとは思うのだ。何しろ相手は好きな人、しかもその人は超の付く甘党ときた。これはもう天が渡せとしか言っていない様な状況。けれども、それ即ち。
(本命チョコ…)
義理でもない、友でもない。その『本命』と言う重圧があるのだ、今までひた隠しにしてきた自分の気持ちを言わなければいけないという重圧が。すごく、押しかかる。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時