再来する幸せ ページ17
「あの、えっと…」
「だから黙れって」
「む、無理ですよ!今ここで黙ったらどう考えても気まずいし、ずっと傍観してる山崎さんなんかどうしたら良いんですか!?」
チラリと山崎さんを見れば口元に笑みを貼り付けて居場所ないな〜なんて顔をしている。いや、もう本当にごめんなさい山崎さん。
そんな山崎さんをそっちのけに銀さんは「だから黙れよ」と重い溜息。
「だってまさか銀さんを泣かせる事態になるなんて夢にも思わないじゃないですか、私あんまり男の人が泣いてるのに免疫あるって訳でもないですし」
「オイもう良い加減にしろ」
「や、だから黙れって言われても気まずくなるの嫌なんですって!大体…、」
どうやって口塞ぐんですか、両手が塞がっている銀さんに成す術なんてない。そう思ったから勝ったような気持ちで言った、それがもう本当に馬鹿な発言だって気付く事なく。
「…こうするんだよ」
いよいよ苛立つ銀さんの声が降る、顔に影がさした。無遠慮に近付けられた顔、私達の間にはもう数ミリ単位の距離しかない。唇と唇の間で空気が揺れるのが分かった。
「ばーか」
フッと微笑を浮かべて、ゼロにならなかった距離がスッと離れた。私は勿論のこと目を見開いた状態で固まって、遅れてかぁぁぁと顔が赤くなる。
「なに、本当にして欲しかった?」
「…そ、そんな訳、」
「顔真っ赤、物欲しそうな顔しやがって」
「しッ…してませんッ!!!」
ま、ガキ相手にする訳ねーよ。銀さんはケラケラと笑った、その目はもういつもと同じで先程の泣きそうな顔はどこにもない。それに安堵しつつ、子供扱いに頬を膨らませ、
「銀さんが馬鹿です」
小さな声で私は呟いた。
また、銀さんと言い合える事が叶った現実に…ひどく幸せを感じながら、銀さんの着流しを掴んで。
「銀さん」
「ん?」
真っ暗闇に一筋の光が射す、もう夜明けはすぐそこまで迫っている。頭の奥がぼぉ…と霞む。
「また、明日」
微睡む中で銀さんの腕の温かさに身を任せた。瞼が完全に閉じられる直前、頭上からは「また明日、な」と優しくていつも通りの声が降り注いだ。これが…私の大切な人の声だ。
「完全に二人の世界ですね、もう」
ボロボロの着物をたくし上げ、呆れたように笑う男は…今まで妹のように手を掛けてきた少女の幸せそうな寝顔と、それを見下ろす優しい笑みを目にして、彼もまた幸せそうに笑い掛けるのだった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時