行ってきます ページ2
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…。
「じゃあ、気を付けろよ」
「はい」
いよいよ、その日が来た。
鬼兵隊への潜入調査当日、いつもとは違うミニ丈の着物を見に纏い、ショートカットの上に長い髪のウイッグを被った完全なる変装状態で私は皆から見送られていた。
今回、私一人という訳では勿論なく。一緒に山崎さんも変装をして鬼兵隊へと紛れ込む事になっている。山崎さんもいつもとは違う着物でメガネを掛けていた。
目の前に立つ副長はどこか心配げな顔をしていて…やっぱり私もまだまだ足りないなぁ、と思う。皆に、心配を掛けてはいけない。
「大丈夫ですよ、逃げ方だけは隊長からしっかり学びましたから」
安心させるように笑う。「そりゃ仕事からの逃げ方じゃねェだろーな?」副長はギロリと睨む。「どうだったかねィ」おちゃらけた様な沖田隊長の声。皆が笑う。
(…幸せ、)
目に、焼き付けようと思う。幸せな日常、何も出来なった私が唯一ここで生きられると思った。田舎から出て来て…自分が何も出来ない子供だと知って、必死になって…ここに居場所を作った。
戻りたい、絶対に。
私は…ここに帰って来るんだ。また皆と笑い合いたいから、皆と戦いたいから。もっと幸せな日々を噛み締めたいから。
「じゃあ、行こうか」
山崎さんがメガネをクイッと上げて、覚悟を決めたように呟いた。私は無言で頷いて、
「皆さん」
大きく息を吸って皆の顔を見回す。ここが…私の帰る場所だ、きっとまた…帰って来れる。大丈夫、信じよう。きっと大丈夫だから。
「行ってきます」
あくまでもいつも通りにその言葉をこぼす。皆も私の顔を見て、目を細めて笑った。いつも通りの声音で。
「行ってらっしゃい」
***
辺りは…酷く静かだった。空気が重いというか、冷たいというか。どことなくヒンヤリとしていて…お化け屋敷でもこんなに寒くないなぁ、とぼんやりと思う。
「…何とか、潜り込めたね」
「はい」
場所は鬼兵隊船内。
今日からほんの数日の間はここに停泊すると信頼出来る筋からのタレコミがあったのだ。
私と山崎さんはその数日間、なるべく限界ギリギリまでここで内部から鬼兵隊の情報を手に入れる。無理は決してしない、何か一つでも手に入れば儲けもの。
過激攘夷派最強を誇る鬼兵隊相手では、それぐらいが精一杯だ。私達は、そうきつく言い聞かされて来たのだ。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» ありがとうございます!全力をかけて完結を目指したいと思いますね!! (2017年2月11日 19時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - 月ヶ瀬ましろさん» これからも頑張ってください!!( ´ ▽ ` )ノ (2017年2月11日 18時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ダイスケさん» コメントありがとうございます!わわ…お気に入りまで!お褒めに預かり光栄な限りです(´∀`*) (2017年2月11日 18時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
ダイスケ(プロフ) - すごく面白いです!お気に入り登録しました! (2017年2月11日 15時) (レス) id: e508cab75b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月8日 21時