虎の娘《２》 (ページ30)

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それからしばらく話して撮影の時間になったからそのまま三人で直接スタジオに向かう。

A 「あれ、今日この三人？」

七五三掛「だから俺たちが外に出たんだよ。普通ちゃか達じゃん」

普通なのかは分からないけど、確かにいつもこういう時さらっと助けてくれるのは宮近とか閑也だった。

そんな感じで緩く撮影は始まり楽屋に戻る頃にはもうふたりの喧嘩もおさまっていていつもの平和なTravis Japanだった。

吉澤「おつかれ〜」

何事も無かったかのように閑也がそう言ってまちゅとしめちゃんはいつも座る場所に行った。

私も当たり前のようにうみの隣に行く。

中村「…お前推しって言った方が良かった？」

全体では終わったみたいだけどうみはまだ気にしていて、近くに行った途端小声でそう聞いてくる。

A 「別に私も即答でしめちゃんって言っちゃったしどっちでもいい」

私がそう答えるとうみは少し安心したように笑ってまた携帯を触り始めた。

元太の方を見ると本当にさっきまで怒っていたのかと疑いたくなるぐらい幸せそうな顔で寝ていた。

ずっと仲良かったはずのふたりの空気がピリピリしがちになっているから嫌でも気にしてしまうけど、私が思っているほどみんな何も思っていないみたいだった。

A 「…仕事とプライベートって別だもんね」

突然小さく呟くとうみは不思議そうな表情をして顔をあげた。

A 「別にうみのこと仕事でも一番好きじゃないといけない必要なんか無いよね」

中村「…なにそれ、仕事だとちゃかが一番って？」

付き合い始めてからも一番に宮近を頼っていたことに気付いていたのか迷わず宮近の名前を出したうみに少しだけ申し訳なくなる。

中村「…どっちでもいいけど俺だって自信は無いし不安だし嫉妬するよ」

その言葉にどう返事をするのが正解なのか分からなくて沈黙が続いてしまう。

中村「俺は仕事もプライベートもAが一番だよ。推しが居ないだけ」

さらっとそう言うと照れ隠しなのかすぐに席を立って楽屋を出ていってしまった。

お互い全然デレないし恋人っぽい空気になることは少ないけどさり気なくこう言ってくれることが嬉しかったし好きだった。