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「……っ、宗く、…はぁっ……宗くん!」

しばらく歩いたところで、背後から愛しい声が降り掛かってきた。
息が乱れている。
すごいスピードで走ってきたのだろう。
…だめだ。
今、君の顔は見たくない。
僕は振り向かずに、その場でとまる。

「…宗くんっ……ごめ、諦めが悪くて…」

…諦めが悪いのは僕の方だ。

「……私っ…宗くんに相応しい彼女に、まだ、なれてなかったかな…」

……違う。

「…私、宗くんのこと、まだ好きだよっ、…宗くんが私のこと、きらいでも」

…違う…

「……なんか、悪いところあったなら、なおすから…!…理想の、彼女に、なる…から…」
「違うッ!」
「……え…」

僕は彼女へ向き直った。
…ほんとに、馬鹿な女だ。
……いや、馬鹿なのは僕の方だ。

「何かに変わる必要などない…」
「……?…」

僕は、…彼女を支配しすぎてしまっていた。
我儘な自分の理想を、押しつけて…変わらせて…。
それで、満足していた。
…けど、……

「気づいてしまったのだよ…」

彼女へ1歩、近づく。
彼女は、逃げなかった。

「僕は…君が好きだ…」

彼女は、ポロポロと涙をこぼした。

「僕の理想を押しつけて…僕の理想に変わってしまった君より…ありのままの君の方が、美しいことに気がついてしまった」

…もともと綺麗な人形を、もっと綺麗にしようと手を加えて…。
壊してしまった。…僕が、壊してしまった。

「…すまなかった」

僕は、彼女を壊れないようにそっと抱きしめる。
彼女は嫌がらずに抱きしめ返してくれた。
顔は涙でぐちゃぐちゃだったが…
……これはこれで、可愛らしいかも、しれない。

「…また、やり直させてくれないか…。…みっともないのは分かっている…深い傷を負わせてしまったことも……。…僕が、直してやるから…」
「…宗くんのこと、好きだって言ってるじゃん…断るわけないでしょ」

…彼女だ。
最初の、1番美しい彼女。
僕が愛していた彼女。
…愛している、彼女。

「…ありがとう」
「…珍しく素直だ。へへ」

彼女がからかうように笑う。
僕にこんな態度をとってくる奴なんて、君しかいないんだ。
憎たらしいが、…君はそうでなくてはいけない。

「ばか宗、もう離さないで」
「…ふっ、上等なのだよ」

彼女の髪をふわりと撫でる。
相変わらず、透き通った肌だった。
うっすらと血の色が透けて頬がピンク色に染まっている。
…なにも、変わらなくていい。

気がついたらすっかり、日は落ちて辺りは暗くなっていた。


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ハム公(プロフ) - ほたるさん» 前作も読んでくださったんですね…!ありがとうございます!了解です。順番に消化していくので、遅くなる場合もありますが…必ず書きますので気を長くしてお待ちくださいm(_ _)m (2017年10月29日 23時) (レス) id: 9d4c60e419 (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - はすみんが可愛すぎて死んだ・・前のやつの最初は笑いまくりました!!リクエストで私は君よりも〇〇さんが好き(憧れ的な意味、好きではない)と言ってみたをお願いします! (2017年10月29日 21時) (レス) id: 836cda0430 (このIDを非表示/違反報告)
ハム公(プロフ) - *神*威*さん» 了解です!ありがとうございます。 (2017年10月25日 0時) (レス) id: 9d4c60e419 (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - 誤字スミマセン!(笑)引き受けていただきありがとうございます!転校するでお願いします。 (2017年10月23日 9時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
ハム公(プロフ) - よつぎさん» わーありがとうございます!転校する、ということですかね…?EveとAdam頑張ります…笑 (2017年10月22日 17時) (レス) id: 9d4c60e419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴木 | 作成日時:2017年10月14日 23時

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