第88話「猫をいじめちゃ駄目じゃない」 ページ38
「ナイスよ!ナイス!ベリーナイスよ!シーザーちゃんもユメちゃんもぉ!…ところでソコにリサリサが居るなら言ってくれ!赤石は無事だってなあ!奪われずにすんだぜ!」
「ええ､危なかったわ｡早く引っ張りあげてやりなさい､シーザー」
「しかし､ドイツ軍人｡アンタ､奴ら以上に不死身な身体持ってんだなぁ…｡軍人､威張らないなら一緒に協力してやってもいいぞ」
「私は別にシュトロハイムが威張ってても気にしないけどなぁ…」
カーズの襲撃から十数時間後､私達はスイスのサンモリッツに到着｡
ちなみに今日で､ジョセフに埋め込まれた指輪溶解まであと5日となった｡
リサリサ､メッシーナ､シーザーがとある館を見ている横で､私とジョセフはテーブルについていた｡
「綺麗だねぇ…流石観光地｡たしか…別名が「太陽の谷」っていうんだよね………あっ!猫だぁ!」
一匹の猫がゆったりと私達の傍を歩く｡
「なんか､そこら辺を歩いている猫でさえ映画女優が飼っていそうな雰囲気だな…」
ジョセフがテーブルに置いてある自分が頼んだ料理の皿から､エビの尻尾をつまみ､猫に向かって投げるが､猫はそっぽを向いた｡
「ケッ…お高いねぇ…エビの尻尾なんか見向きもしねぇ｡世間の恐ろしさを知らずに育ったお嬢さん猫のお散歩って感じね」
そう言うとジョセフが今度はサーモンの燻製をフォークに刺して､猫に語りかけた｡
「それじゃあ､このサーモンの燻製はお気に召すかな?」
気付いた猫が､ジョセフに寄ってくる｡
「おおっと…大好物みたいねぇ…」
「可愛い､この子なんて名前なのかな?」
しかし､ジョセフは猫の手が届かないギリギリの距離で焦らす｡
「ほれほれほーれ､もうすぐ届くよーん､もっともっと伸びしてーん」
「ジョジョォ､そろそろあげなよォ｡意地悪しないでぇ」
猫は燻製につられて立ち上がる｡
「かかったな」
ジョセフがすかさず猫の足を､自分の足で払った｡
猫は驚いて転がり､逃げて行った｡
「どーだ､たまげたか?受け身もとれまい､上品猫ォ」
キヒヒと意地悪に笑うジョセフを私は思わず､ジト目で見つめる｡
「ジョジョ…」
「す…すみませんでした」
ジョセフが､そういやお前猫が大好きなんだっけな､と私から目を逸らしながら言った｡
「まぁそれもあるけど………お互い落ち着いて冷静にならなきゃね」
私は自分が頼んだアプフェルトーテにフォークで切れ目を入れながら呟くように言う｡
「ああ……って､お前ソレ」
私のフォークを持つ手は震えていた｡
第89話「もう一つの気がかり」→←第87話「おっかないよねアノ執念」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢書き | 作成日時：2018年8月18日 8時
