第86話「サンタナが番犬て」 ページ36
「サンタナがなんだというのだ｡奴は青っちろいガキ｡番犬の様な存在｡我らとは比較にならん!…さて､赤石を貰おうか…」
雪上に転がるシュトロハイムに近付き､片手で掴みあげると崖の方へ歩いていく｡
私とジョセフは互いに頷き合うと､カーズから距離を取るようにして､後を追った｡
「ユメ…アレはヤバイぜ｡今の俺らじゃあとても防げえねぇ」
「確かに…でも…何とかしないと赤石が…」
「そうなんだよなぁッ…アイツに赤石が渡っちまうのが一番ヤバイ……嗚呼､ったく｡俺はワムウの解毒剤を手に入れなくちゃならねぇし､ユメは解毒剤は手に入れたが､カーズに逆恨み………今年の俺らは親戚同士で仲良く厄年かぁ…畜生!」
私はヴェネツィアを出発した時から既に身に付けていたショルダーバッグの中をまさぐる｡
勿論､このバックの中にはアノ本も､そして鞭も入っている｡
私が鞭を手にした時には､カーズと距離をおきつつの横並びになっていた｡
「赤石はこのポケットに入ってるなぁ…」
カーズがシュトロハイムの軍服の胸ポケットを破り､赤石を手にした｡
シュトロハイムが再び雪上に放り出される｡
「この時を待っていた!いや､五千年!遂に目の当たりにするぞ!…元々この石はこのカーズが手にすべきもの!」
「カーズ!」
「赤石を返してもらおう!」
「待っておれい､今､殺してやる…」
カーズの鋭い眼光が私を射抜く｡
「ひっ…」
「コっコイツ…やっぱりユメの事憎んでやがる」
ヤバイぜこの状況は､とかなり焦っていたその時､雪上に倒れ込んでいたシュトロハイムが声をあげる｡
「待て､カーズ｡貴様､このシュトロハイムを完全にやっつけたと思うなよ…」
シュトロハイムが顔を上げ叫ぶ｡
「我がドイツ軍の科学力は世界一ィィィッ!!」
シュトロハイムの右目から､紫外線が照射された｡
それにより赤石がカーズの手から弾かれ､雪上へと落ちる｡
だが､運の悪いことに､赤石は傾斜となっていた雪上を滑り落ちていく｡
「ああッ赤石があ!」
「まずい!あっちは崖だよ!あのままだと赤石が!」
「しっ!しまった!もし赤石が崖下に落ちたら!」
刹那､カーズが赤石に目掛けて走り出す｡
「ジョジョ!早く拾いにいけぇい!十分先に追いつける!」
ジョセフも走り出した､だが｡
「まずい…カーズの走り方は迷いがない｡…止まる気なんてないんだ…最初から赤石を手にしてそのまま落ちる気でいる」
第87話「おっかないよねアノ執念」→←第85話「ドイツの科学は世界一」
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作者名：夢書き | 作成日時：2018年8月18日 8時
