第74話「やべえ､やべえ」 ページ24
「この先､もっとヤバイ奴だって控えてるんだから､私だって戦えなきゃまずいだろ?」
ジョセフが不満気にしながらも､黙って私達から距離を置いた｡
ジョセフも分かっているようだが､私が万が一倒された場合はジョセフがすぐに対処しなければ､直行で赤石を奪いに行くのは必然｡
だからこそ､リサリサの元へ向かうより､ここに留まるのが得策なのだ｡
といっても､ジョセフの場合､それも考えつつ私の心配もあってここに留まっているというところだろう｡
「はっきり言って女と戦うのは好まないんだがなぁ」
「ふーん､なら何で私とあんな約束をしたの?」
「貴様の友を思う､愚直なまでの心に敬意を表し､戦う事にしたのだ…まぁ､俺も好敵手という奴が欲しいというのが最大の本音だがな」
私は柱の男達はわりと戦闘狂なところあるよなと､あらためて思った｡
「じゃあ､そろそろ…始めようかァッ!!」
私が鞭を振るう｡
エシディシは思った通り軽々と飛び上がり避けた｡
そしてそのまま落下して針に自ら突き刺さった｡
「あっ…やべ」
離れた所から､「あっ!馬鹿ッ!」と聞こえてきたがそれに反応している余裕はない｡
エシディシが何をしようとしているのか瞬時に理解した私は､シャツを脱ぎつつ飛び退く｡
エシディシはありえない体勢から私の方へ飛び掛ってきた｡あの500度の血液を撒きながら｡
私はシャツをエシディシに投げつけ､血液を少しでも防ごうとする｡
やはりというか､血液を数滴浴びた瞬時にシャツは燃え灰となってしまった｡
「そんなもので防げるかぁッ!」
残念ながら私は防ぐ為にシャツを犠牲にしたわけではない｡私はほんの少しの時間が欲しかったのだ｡
「白銀色の波紋疾走ッ!!」
鞭が音速に達した時の独特の音が響くと同時に､凍った血液が無数の針の上に落下して砕ける音が響いた｡
エシディシが驚いた顔をしながら体勢を針の上で立て直す｡
「何だ…妙な技を身につけたじゃあないか」
「にゃははは､私もちゃあんと修行しましたの｡必殺技ぐらい身に付けてるのよん」
微笑みながら､鞭を握り直す｡
しかし､エシディシはそんな私を嘲笑した｡
「何がおかしいの?」
「ふっふっふ…貴様がいくら技を身につけようと所詮俺には勝てぬよ…何故なら､貴様は既に罠にかかっているのだからなァ!!」
ハッとして足元を見る｡
足元の針の間に血管針が張り巡らされていた｡
そうだった｡そういえば､奴は血管針を使って結界を張り巡らせジョセフを追い込もうとしたのだ｡
第75話「勿体ないけど使っちゃおう」→←第73話「熱すぎるのは好きじゃない」
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作者名：夢書き | 作成日時：2018年8月18日 8時
