第67話「確認したいじゃん?」 ページ17
「よし､何事もやってみないと始まらないしね」
皆が寝静まったであろう時間､私はショルダーバッグを身に付け､館の外へ出ていた｡
月から降り注ぐ青白い光を浴びながら､バックから夜の色に染まっている贈り物二つを取り出し､身に付ける｡
手袋を嵌め､その手で鞭を握った｡
「でも､一本鞭かぁ｡結構上級者向けだった気が…」
とりあえず鞭を振ってみると､パシンと軽い音を立て石畳の部分を叩いた｡
「音速にするには…もっと上手くやらなきゃな」
うん､と一人頷く｡
「さて､まだまだやりたいとこだけど…明日もあるし…今日は確認だけ出来れば良かったし」
鞭を巻き取り､手袋を外し､バックの中にしまい込む｡
くるりと踵を返し舘へと戻った｡
自分の部屋に戻る為､一人静かな廊下を歩く｡
廊下は月光で思いの外､明るい｡
「こんな時間にどうしたんだい､シニョリーナ?」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえ振り返る｡
そこには､月の光に照らされたイタリアーノが居た｡
「う､ううん｡なんでもない､シーザーこそどうしたのこんな時間に」
少し声がうわずった気がしなくもないが､そんなの気にしない｡別にやましい事なんてないし､考えてもいないもいないのだ｡
堂々としていればいい｡いいのだが､出来ない｡
私には無理だそんなの｡別にシーザーが嫌いとか苦手とかそういうんじゃない｡むしろ好き｡
ただね､そのね｡私は元々男が苦手で｡
二人きりとか､もう無理で(慣れれば別)｡
シーザーとの付き合いもジョセフ程ではないにしろある｡慣れたっちゃ慣れた｡
だがこの男､女ったらしなのだ｡天然物の｡
スケコマシな部分だけはどうにも慣れない｡
「ちょっと寝れなくてね」
シーザーが優しく微笑む｡
なんだか､その笑顔がまた寂しそうに見えた｡
「私も…そんなとこ」
そう言ってあらためてシーザーの姿を認識して思わず惚ける｡
いつもしているバンダナは外していて､白いシャツに黒いズボン｡かなりラフな格好だ｡
そして､彼は今青白い光に照らされてまるで一枚の絵画のようだった｡
なんだろうコレが色気というものなのか｡
思わずじぃッと見入ってしまっているとシーザーに首を傾げられた｡
「あッ…いや…そのね!ただね!シーザーって美人だなァって思って!」
にゃははは…と笑って誤魔化す｡
別に嘘は言ってない｡
本当に美人だと思ってる｡
私がワタワタとしているとシーザーが笑いを零した｡
第68話「心の中で雪が綺麗と隣で笑う」→←第66話「真逆の贈り物」
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作者名：夢書き | 作成日時：2018年8月18日 8時
