第61話「どうしたものか」 ページ11
私はシーザーが登るのをジッと見る｡
やはり､一点集中の波紋で指先を使って登っている｡
だが､あのシーザーが既に疲労をみせている｡
やはり､コレは波紋の持久力を鍛える修行なのだとあらためて思う｡
しかし､私は持久力という言葉とは本当に疎遠だ｡悲しいぐらいに｡
実は一点集中の波紋は既に出来る｡
私は､波紋の修行を受けなくてはならないと分かった時から､ひたすらそれを練習していたので普通に出来る｡
だって､リサリサ先生は絶対に私も容赦なく落とすと確信していたから｡
「さて…どーしたもんかなァ…」
のんびりとした口調で呟いていると､隣のジョセフが喚き出した｡
まぁ､彼の性格を考えれば当然の事だろう｡
服を割いてロープを作っている｡
それを眺めながら､「絶対コイツ､リサリサの事をいじめてやろうと考えている」と思ったが口にはしない｡
余計な体力を使っている場合ではないのだ｡
ジョセフがロープ上にした服を柱に巻き付け､登って行こうとしたその時､ナイフがロープを切断､ジョセフは再び底にたまる油へと落ちた｡
「波紋以外の方法で登る事は柱へ対しての冒涜｡このヘルクライムピラーは波紋だけを好み､波紋以外は跳ね返す!それを忘れてはならぬ!」
ナイフはリサリサが上から投げたものだった｡
去っていくリサリサに､ジョセフが助けを求める様に声を掛ける｡
しかし､彼女は養豚場の豚を見るような目でジョセフを見て無言で去っていった｡
ジョセフが､憤る｡
「許せねぇー!美人なだけに尚更怒りが込み上げる!」
「あー､美人なのは認めてるんだね｡一応」
今､何時間経ったんだろうか｡
時計なんて身に付けていないので今が何時なのか､落とされてから何時間経ったのかまるで分からない｡
シーザーが半分ぐらいまで登っている｡
私とジョセフは未だ0m地点｡
ジョセフがシーザーを見ておろおろ心配したかと思うと何かに気付いたという目をした｡
そして､ジョセフは柱にくっ付いて登り始める事に成功した｡
「おい､ユメ!お前も一点集中の波紋で登って来いよ!」
ジョセフに言われ､そうしたいんだけどねぇと思いつつもはーいと返事はしておく｡
私の場合は短期決戦しかない｡
自分の持久力のなさは自分が一番知っている｡
体力なし､筋力なし､波紋はジョセフとシーザーよりもまだ弱い｡
登っていけたとしても､多分､というか絶対に途中で力尽き落っこちる自信だけはある｡
悩んでいた時ふと､リサリサのアノ言葉が頭をよぎった｡
第62話「やってやろうじゃないの」→←第60話「さあ腹を括ろうか」
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作者名：夢書き | 作成日時：2018年8月18日 8時
