第50話「現場は大混乱であります」 ページ50
ジョルノを抱えたまま､もう一度階段の上を見る｡
ぶっちゃけもう背後を取られているだろうぐらいには思っていたのだが､それは外れていた｡
というか､上のお方も困惑しているようで私達どころではなさそうだった｡
「これは君達の仕業かな…」
背筋が凍りそうな程に冷たい目が私達を見下ろす｡
「残念ながら私達にそんな事は出来ないのよねん」
私は引き攣った笑みを返す｡
本当にあちらもこちらも大混乱である｡
「本当に違う｡これは「真実」｡私達の能力なんかじゃあない」
「……」
彼は口元に手をやり､ほんの少し考える仕草をした｡
「ふむ､まァ嘘はついていないようだな…今そんなくだらない嘘をつくメリットは考え難い」
__そんな事より｡
「そんな事よりも階下の「足音」は何処へ行ったんだろうなぁ…」
「…さぁ…」
確かにそれは気になる｡
奴の能力､奴の戦い方｡
私の頭の中でそれらが鮮明に引き出されていく｡
うわぁ､戦いたくねぇ｡いや､階段の上の傲慢そうなお方とも戦いたくないですがね｡
「なぁ､私は今直ぐに確かめたい事があるんだ」
「え?」
確かめたい事?
奴の能力の事か｡
「…私の「肉体」の事で気になって仕方が無い事があるのさ」
「!!」
おっと､その事でしたか｡
私の腕の中でジョルノがぴくりと動いた｡
「此処に来て…私の事を「見て」くれないか?」
自身の肉体につぅと指を這わせながら彼が頼む｡
随分と余裕そうに見えるが内心は私達と同様だろう｡
とはいえ､階下の者はガン無視方針という点を踏まえるなら私達よりは大分余裕そうだ｡
「何かが違う気がしてね…」
「おや､それまた奇遇な…」
この際何を誤魔化してもどうにもならない｡
「……分かった｡貴方の事を「見る」というのは引き受けよう｡但し見て確認するというだけだ」
見ると言ってもどの事だか｡
肉体か､それともスタンドか｡
私はジョルノに小声である事を頼んだ｡
ジョルノは直ぐに私の首筋に腕を絡め抱き着く仕草をすると同時に私のシャツの襟を少し捲った｡
__あります｡
ジョルノの小さい声が妙によく聞こえた気がした｡
「思ったんだけど､私に階段を登れってこと?」
「そうだが」
「…私は肉体労働はなるべくしない主義なんだよ」
「その少年を下ろせば少しは負担が減るだろうさ」
「いやいやァ､この状況で子供を下ろすのはちょっと」
私としてはジョルノを離せない理由があった｡
何故なら今の状態だとジョルノが彼の格好の餌食になりかねないからである｡
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作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
