第45話「おはようございます」 ページ45
あの兄が殊更悔しそうにしていた。
_だから、このまま終わるなんてしない。何時か。何時かのし上がるんだ。上へ行くんだ。
上。上とは何だろう。そういえばお母さんが言っていたあの話も。上にあるんだっけ。
嗚呼、確か。それは「天国」という所。
でも「天国」だってきっと色々ある。何かしらある。存在している。だとしたら真の「幸福」ではないんじゃないだろうか。この世には必ず対となるものがある。幸福の対は不幸だと私は思う。だからきっと天国は完璧じゃない。
単なる幸福では駄目だ。
「真の幸福」を目指さなくては。
それこそ対等有り得ぬ様な。完璧な「理想郷」。
そうすれば兄を。私に残された宝物を苦しみから救い出せる。
私のもの。お兄ちゃんは私のものだ。あの髪に、あの肌に、あの心に、触れていいのは私だけ。
もう二度と。離れるものか。手放すものか。
もう二度と。
「ん…」
ぱちりと目を開けると、そこはお花畑_ではなく。
仄暗い空間。大理石の床。壁には絵が飾ってある。
気を失う前は気付かなかったが、どうやらここは屋内らしかった。
「あ…危ッな…」
意識が完全に覚醒する前にはもう反射的に飛び起きていた。
このヘンテコな空間はあくまで敵地。
にも関わらず寝こけていたとは不用心にも程がある。
慌てて自分の状態を確認するが、特に異常はない。
手を見てみたのだが、傷等何処にもないし、まず手袋も裂けてなどいなかった。
幻覚でも見たか。
そろそろ過労で死ぬんじゃないか私は、等と自嘲している時だった。
何かの音が聞こえてきた。
「…!……して…!その…」
顔を上げる。
人の声だ。それに靴音と慌ただしい気配。
それは次第に大きくなり、明瞭に。
「ッ…Aさん!!」
「ッ…ジョルノ!!」
ジョルノが廊下の曲がり角から姿を現した。
後ろで結っていた髪が解けている。
ジョルノは私の元まで走って来ると、私に手を差し伸べ立たせた。
「説明してる時間は無い。走りながら話します。いいですね?」
「了解、じゃあ行くか」
私の手を握った時。一瞬、ジョルノが眉を顰めた気がしたが、それを言及するよりも先にジョルノは走り出していた。
「ポルナレフもちゃんと居る?」
「居ますよ、今は僕のコートのポケットの中です」
ジョルノは片手でポケットに軽く触れる。
「で、君の現在の状況は?」
「…それが」
ジョルノは表情を曇らせながら自分の状況を説明してくれた。
第46話「今は会いたくないですね」→←第44話「落ちてる物には気を付けましょう」
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢書き | 作成日時:2019年1月4日 10時