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第44話「落ちてる物には気を付けましょう」 ページ44

私はこれまでに何回落下し、何回転がった事だろうか。
そんな事を思いつつ、よろよろと立ち上がった。
ふと、右手に違和感を覚え見てみると。
手袋が破れ右手は血塗れだった。
「うへぇ…」
思わず顔を顰めた時。
キラリと光るものを足元に発見した。
私の足元は砂と水に塗れていた。
先程の戦闘で欠けた刃か何かかと思って左手を伸ばすと。
「うあッ!?」
いきなりその光るものが私の左手目掛けて飛んで来た。

「な…なな…なな何コレ」
こちらの手袋も破れ左手は血塗れに。
それを見た途端、突然力が抜け座り込む。
そして、なんと左手に突っ込んできた何かが体内へと入って来たのだ。
それだけでも衝撃的なのに、更に、右手の方でも何かが疼きだした。

「う…」
じわじわとそれらは私の体内へ侵入して行く。
だが不思議と痛みは無かった。
とはいえ、動けないのと未知な不安が少なからず恐怖を煽る。
「何…何コレ…」
完全に力が抜け切り横に倒れ込む。
それと同時に急激な眠気に襲われた。寝ている場合ではない。そんな事百も承知の上だが、兎に角これが物凄い。全身麻酔でもされたんじゃないかと思う程である。
「や…やば…」
考えられるのはタルウィかアズライルのスタンドの影響か、他にも何か_残念ながら、頭が働いたのはそこまでだった。
私は睡魔に呆気なく陥落し、意識を手放した。

_お兄ちゃん。
嗚呼、何時の頃だろう。
私は兄の傍に居た。
兄の傍に居る事は私にとって至福だった。
美しい金糸と美しい白い陶器の様な肌、双眸はこれまた美しい紅玉。
私と似た色。母が私と兄に与えた色。
兄を眺めるだけで恍惚と出来た。母を眺めるだけで心が踊った。
だが、それは何時までも続かなかった。
母が死んだのだ。
原因は明確だった。それは父だった。父等という名称を使う事も吐き気がするが、そうとしか言い様がないのが腹立たしい。
奴は母を無理に働かせ、怒鳴り散らし、気に食わなければ殴った。
結局、母はあの男のせいで死んだのだ。
あの男は許さない。何時か殺してやると誓った。地獄に堕ちろと呪った。
だって、兄も殴るから、私の宝物を傷付けるから。
だが、そう思うと同時に自分自身も嫌悪の対象だった。
だって私には奴の血が混じっている。気持ちが悪い。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。お母さんだけなら良かったのに。きっと「綺麗」になれたのに。
それを兄に話すと兄は私を抱き締めて言った。
_僕も一緒だ。
そうか。この一見美しく見える兄もそうなのか。

第45話「おはようございます」→←第43話「蛇の如く執拗に」



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作者名:夢書き | 作成日時:2019年1月4日 10時

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