第38話「体験したかった様なしたくなかった様な体験」 ページ38
ちらちら舞っていた羽毛は消えたし､感覚も戻った｡
「そりゃあ弱くしたけども…」
あっれれー､おっかしーぞー(棒)｡
確かに波紋はわざと弱く流した｡気絶させる程度のものだ｡
だが､波紋の訓練も何もしていない筈の者がこれで気絶しないわけがない｡
タルウィが最初に会った時のような笑みを浮かべた｡
「やっぱり…ないよね」
「はは､何の話だ…?」
「呼吸」
毒を孕んだ視線が私に向けられる｡
「…聞いてた通り､不思議だな」
「この世に不思議な事などないのだよ､タルウィ君」
タルウィから目を逸らさず立ち上がる｡
そして､右の太腿に刺さったメスを引き抜いて床に放り投げた｡
「実体がない…とか?」
「アンタ…ホームズの親戚か何か?」
何でそうスラスラと答えを当てられるんだとタルウィは眉根を寄せる｡
「残念乍､違うんだなァ」
「だろうと思った…」
どっちかと言うとモリアーティっぽいしなと､タルウィは言って皮肉めいた笑みを浮かべた｡
「それって…ミア…いやデア?…まぁいいや､あの女の能力によるもの?それとも別なやつの?」
「答える義理はねぇな」
刹那｡
見覚えのある数本のナイフが私とタルウィの間に突き刺さっていた｡
「!?」
そして＿｡
タルウィの姿が忽然と消えてしまっていた｡
「キ…キング・クリムゾンを思い出すな…」
思い出したくもないが思い出してしまう｡
「あ…!そういえば花京院達ッ」
私は急いで､床に転がったアズライルを拘束して連絡を入れた｡
「無事!?」
『無事…と…いうか､まァ…事態は…おさまったんです…が』
苦しげな花京院の声に焦りを覚える｡
「こっちは倒した!1人逃がしたけど!多分大丈夫!そっち行くから待ってて!」
私は濡れ鼠になりながら､アズライルを引きずって､花京院達の居る場所を目指したのだった｡
3月19日午後8時｡
「それで…まぁ…その､僕はドラクエの勇者になりかけましたよ…」
勇者ノリアキか､ふむ｡
「はは…新刊のネタにでもしようかと悩んでます…」
「忙しいし冬コミあたり?」
「そんなとこです｡早く承太郎に完全復活して貰わないと…僕も忙しいんですよね」
「うん｡そうだね…必ず復活するよ」
花京院は現在入院中である｡
というのも今日の全世界2次元が3次元に事件によって負傷したからである｡
私が思っていたよりも酷く､結局入院する事になったのだった｡
勿論､波紋による治療もしたが､あれも万能ではない｡
ジョルノに協力して貰おうかな｡
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作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
