第34話「原点回帰」 ページ34
「……」
私は承太郎の様子を見に､彼の居る部屋へ向かうべく足を動かしていた｡
こつこつと奏でられる靴音がやけに響く気がする｡
懐かしい記憶を再生させながら｡
「あの時はDIOが死んで記憶が全部戻った頃だったからなぁ…色々精神的にもきてたんだよなぁ」
本当にシーザーには感謝してもしきれない｡
よく私と数十年の歳月を共にし､支えてくれたものだ｡
「…今回は終わったら会えるかね…そんで皆で楽しくどんちゃん騒ぎでもしたいもんだ…」
甘い理想が頭を過ぎったが､直ぐに振り捨てる｡
今はよそう｡
思考をもっとシンプルにしなくては｡
承太郎と徐倫を助ける為｡
そして＿世界を消さない為にも＿｡
あれは少し前､白猫から連絡があった時の事だ｡
「んでね､ミアとデアが同一人物ってとこまで行ったのね」
『へぇ､やるじゃないの｡…あッ､そうそう｡追加情報なんだけど…』
「はあぁッ!?まだあるわけ!?もうキャパオーバー!」
勿論､有益な情報は欲しいところだが､私の脳も心もいっぱいいっぱいで情報が溢れ返っている｡
『まぁまぁ｡えぇと､デアを倒す事は「空条承太郎と空条徐倫」を助ける事にも繋がるんだよ』
「ど…どういう事…」
『いいかい､デアはこの世界をどうしたいと思う?』
デアの手下の言葉が頭を過ぎる｡
たしか､理想郷がどうこうと言っていた｡
「自分の理想を詰め込んだ世界を創りたい…とか?」
『正解!…だがしかし問題なのは彼女の理想とは何かということ!』
彼女の理想?
『……言ってしまえば善悪のその先かな｡何も無い｡神も下僕達も何も無い｡僕的には退屈な…』
その言葉にハッとする｡
そういえば､世界が消し飛ぶだとか虚無だとか前に｡
「ま…真逆…」
『うん､世界は終わる』
＿完全なる「無」になるわけだ｡
成程｡成程｡原点回帰かよという私のツッコミはあながち間違ってはいないものだったかもしれない｡
まァ世界の最初が無だったらの話だが｡
「…頭の痛い話だ…」
そう呟いた時だった｡
喧しい警報音と金属音が響きその後に男の声が聞こえてきた｡
「おや､それは大変だ」
「あら､貴方どちら様」
廊下の曲がり角からゆっくりと白衣の男が現れた｡
「初めまして､A・ツェペリ｡私､アズライル・ナルコティックと申します」
「あらあら､ご丁寧に｡ところで何の御用があって?私は用事があるのだけれど」
アズライルは優雅に微笑む｡
「「A・ツェペリ」の死を告げようと思いまして」
「おや…それは是非とも御遠慮願いたいんだが」
第35話「安楽の告死天使と猛毒の悪魔」→←第33話「再び誓い合いましょう」
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作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
