第32話「懺悔」 ページ32
「でも…それでも…」
私はゆっくりと体勢を変え寄り掛かるのを止める｡
「私は…そのままには出来なかった!」
今まで抑えてきたものが私の中から溢れて来る｡
「何が正しいか!そんなのどうだって良かった!関わってしまった「私」は「世界」から顔を背け「運命」へ忠実に生きるなんて出来なかった!!」
関わってしまった｡
同じ生ける者として｡
だから､尚更＿＿｡
「抗いたくなったんだ…運命の下僕たる「眠れる奴 隷」である事を放棄して!そこに辛く重い覚悟を持たなくてはならない事実があったとしても!構わなかった!苦しみ続けようと構わなかった!」
生きていて欲しいと思う事は身勝手なのか｡
死にゆく運命を見過ごせないのは､神々への傲慢なる冒涜なのか｡
「………私も…憧れてしまったから」
憧れた｡
私は憧れた｡
貴方達に憧れてしまった｡
「届かないとはわかっていても､私も同じ様になりたいと…この人達と一緒に居たいと思った」
「貴方と…一緒に……いたいと思ったの」
もうシーザーの顔をまともに見れなくなった私は横を向いた｡
私は彼の死ぬ運命を壊した｡
しかし､私の完全なるエゴに罪の意識があるのはたしかである｡
「本当にね｡…皆が幸せに暮らしました…なんて､それこそ
言い終えると同時に一旦口を閉じた｡
言いたいだけ言って何だか泣けてきた｡
シーザーには本当に悪い事をしてしまっている｡
いきなり来て､いきなり意味不明な事を言って｡
どのくらい時間が経っただろうか｡
私もシーザーもずっと黙っていた｡
だが､流石にこのままは何も進展しないと思い､彼に謝罪の言葉を述べ部屋を退出しようとしたその時｡
「…待った」
シーザーが静止の言葉と共に大股で数歩前へ進んで私の目の前に来た｡
何時もの事ながら､歩幅がこんなにも違うんだなと場違いに感心してしまう｡
とはいえ､私にはこれから何が待っているのだろうか｡
真逆とは思うが貧民街テンションで怒られたりしないだろうか｡
それは泣く｡そうなったら確実に泣く自信はある､と覚悟していると｡
「他に何かして欲しい事はないのか?」
「え…」
予想外の言葉に気の抜けた声が出た｡
「話したければもっと話してもいい｡泣きたければ泣いてもいい｡ただ黙って寝ていたいだけでもいい」
するりと腰に手を回される｡
不快感なんてものはない｡
第33話「再び誓い合いましょう」→←第31話「久し振りだね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
