第18話「お楽しみはこれからなのよ」 ページ18
気付いた時には私は本能的に飛び退いていた｡
「真逆…真逆だよな…」
吉良がスタンドを出して下半身を引き寄せる｡
そして＿｡
「あの奇妙な仮面を被らされてから､妙にザワつくんだよ…」
半々になっていた肉体がくっつき吉良は立ち上がる｡
「仮面…」
カーズがほう＿と興味ありげな声を漏らす｡
波紋の出番か｡
私が呼吸を整えたその時｡
「貴女はコッチでしょ?」
凛とした声が聞こえた｡
瞬間的にぞくりと悪寒が走る｡
気づいた時には無数のナイフが降り注いで来ていた｡
「くっ…」
スタンドを駆使しながら鞭も振るい､波紋も使う｡
我ながらよくこんな器用な真似が出来たと感心したのは､全てのナイフを片付けてからだった｡
さくり､さくり､さくり｡
砂を踏む音が近付いてくる｡
私はそちらを振り向いた｡
「ふふふっ」
たなびく金髪｡
そこから覗く双眸は紅い｡
白い肌は陶器人形の様で｡
美しい｡
あの男に似た女｡
だが＿何だか他の誰かにも似ている気がした｡
「ジョナサン・ジョースターの肉体はディオ・ブランドーが…だったらA・ジョースターの肉体は?」
女の口元が緩やかに弧を描く｡
瞬間的に私の中の＿何かが＿騒がしく唸り始めるのを感じた｡
「余所見は感心しないな」
「平穏とは程遠い状況なんで大目に見てもらえんかね」
後ろから伸びたキラークイーンの手をかわして､吉良自身に蹴りを入れ吹っ飛ばす｡
吹っ飛ばした方向にはカーズが｡
私は蹴りの勢いでぐるりと回転し､女に向き直る｡
「波紋は?ねぇ?使ってあげればいいのに」
女はころころと笑う｡
「咄嗟すぎたもんでね」
何故か心が昂ぶる｡
後ろで爆発音と空を切り裂く音が響きあっている｡
「貴女…どちら様?」
「私は貴女よ」
「…?」
「あら､聞いてないの?私は貴女｡貴女は私｡この世界での貴女は私…」
頭を殴られた様な衝撃とはこの事か｡
世界の音が一瞬全て消えた様に錯覚する｡
こいつは｡
この＿この女は｡
「…貴女が……「デア・ブランドー」…だね」
「そういう貴女は「ユメ・ジョースター」…」
ああ＿でも今はツェペリなんだっけと､この世界の私が笑った｡
「そう｡そうなの…｡でも…貴女､「私」の肉体を得たんじゃあなかった?」
「ええ､得たわ｡あっちの世界から来た肉体｡でもこの空間では肉体なんて不要なのよ」
「この空間は精神…つまり魂の空間｡肉体がなくとも成立する世界」
デアが妖艶に微笑む｡
「世界の歪みと魂の空間､お楽しみあれ」
第19話「何でも切れる､何でも殺れる」→←第17話「私のエゴイズム」
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作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
