第11話「ゲーム」 ページ11
『君は今､歪みで生じた時の狭間にいる』
待て｡
待て待て待て｡
「何?中二病?」
『それは僕の息子の一人のことだよ｡僕はそうじゃない』
「じゃあ､その時の狭間って…?私は理数系が天敵なんだけど」
『簡単に云えば､この世界の君が引き起こした歪みが､君を巻き込んだのさ』
「ごめん､理解不能」
第一､歪みってなんだ｡
私の疑問を察した白猫が説明を付け加える｡
『彼女は君の邪魔をし続けた｡彼女の望む世界を手に入れる為に』
邪魔?
望む世界?
『たとえばこんな事はなかったかい?救おうとして救えなかった､しかも不可思議な程に君は無力な傍観者』
その言葉達に､今まで閉じられていた心の頁が捲れ出した｡
『君はね､狙われてるんだよ｡何せ僕がこっちの世界に連れて来なければ､彼女が君を連れて来ようとしただろうから…』
でもそんな事になってたら直ぐにでも壊されてただろうね＿と白猫はがくすりと笑った｡
驚く程冷たい笑いに息を呑む｡
だがその冷たさは直ぐになくなり､柔らかで優しい声音を取り戻す｡
『彼女は君に絶望して欲しかったんだね｡そして精神をこれでもかとぐらつかせ揺さぶれるよう』
『だからこそ僕が邪魔したんだ｡勿論､なるべく君自身の力で救うという事を優先したけどね｡でも君が壊れたら何もかもがおじゃんだ｡それに彼女が邪魔するのは君が世界へ挑む事に関して平等じゃなくなる｡…あとはまァ補足だけど……もし彼女の望む世界が完成したら､来るのは退屈｡何の面白味も無い世界｡虚無への到着｡…最悪な未来だよ』
まるで子供が拗ねる様に白猫は語った｡
「なんとなく…わかった気がする…」
私はゆっくり頷いた｡
「理解可能…かもね」
『それは良かった』
まだ動揺が体を走っているが､兎に角状況を呑み込まなくてはと押さえつける｡
「それで…どうすればいいの?」
『簡単だよ｡よくあるゲームと一緒さ､ラスボスを倒せばいい｡そうすればここから出られる｡なにせ､君の魂が彼女に酷似しているから起きたことだ｡だから君が衝撃を与えてその反動で元の世界に戻れる』
「ラスボスって…」
『さぁ…｡ただ､戻った時にもまだ戦いはあるから覚悟はしておく事だよ』
『あ…そうそう｡これから会う者達は懐かしい顔ぶれになるってことは覚えておくといい｡驚いて腰を抜かさないようにね』
そこで白猫の声は途切れた｡
最後にとても愉快そうな吐息が聞こえたのは気の所為だろうか｡
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作者名：夢書き | 作成日時：2019年1月4日 10時
